2017 Fiscal Year Research-status Report
中等教育における生徒の健康情報リテラシーを育成するためのカリキュラム開発
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17K01027
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
古田 真司 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (90211531)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 郁水 弘前大学, 教育学部, 講師 (50794129)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 健康情報リテラシー / 保健教育 / 批判的思考 / 判断力 / 科学的根拠 / テレビ映像 / 教材化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「健康情報」を題材とした科学リテラシー教育を、中学校・高等学校における保健教育の枠組みの中で行うことができる実践的なカリキュラムを開発することである。 これまで筆者らが行った研究をもとに、生徒の健康情報に対する「判断力」を測定、評価する指標(テスト)を作成し、膨大な健康情報から、生徒がその「根拠」が見いだせるデータベースを作成して教材化し、それらを利用した一連の授業案を作成して実施した後、その効果を検証する。効果測定では、いくつかの場面を想定した問に対する「判断」やその後の「行動」を調査して、生徒の汎用的なリテラシーの能力を総合的に調査・検討することを目的として、本研究が計画された。 2017年度は、健康情報に対する批判的リテラシーの概念を取り入れた、日本国内の主に中高生~大学生で実施可能なレベルの「健康情報判断力テスト」の開発を試みた。また、生徒や学生の健康情報リテラシーを育成するために、どのような内容の指導(授業プログラム)を行う必要があるかを検討する目的で、大学1年生を対象として、我々が考案した、6つの題材を用いて約10分で行う健康情報リテラシーに関する授業実践を行い、その効果を検討した。 さらに、健康情報が含まれるテレビ映像の教材化の一環として、さまざまなジャンルの映像のHDDレコーダーに蓄積し、これらを数分程度の映像に切り取ることで、保健学習の授業で利用可能かどうかを検証した。さらに、そのうちのいくつかを利用して健康情報の見方を学ぶ保健教育実践を中学校で実施した。また、中学生の健康情報に対する判断力の実態を明らかにするための調査研究を実施して論文としてまとめた。 2018年度は、健康情報の「根拠」の可視化に焦点を絞り、そのためのデータベース化や教材化、また、授業を通じた生徒へのアプローチのしかたを検討する計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
健康情報に対する批判的リテラシーの概念を取り入れた、日本国内の主に中高生~大学生で実施可能なレベルの「健康情報判断力テスト」の開発を試みた。既に我々が実施済の健康情報に関する「批判的思考力テスト」をベースにして、問題数を30問に増やしたテストを大学生350名に実施した。さらに、質問項目1つずつに項目分析を行い、繰り返し実施が可能なテストとして実施可能かどうかの検討を行った(保健教育の評価を目的とした健康情報判断力テストの開発、教科開発学論集5,1-11, 2017)。 生徒や学生の健康情報リテラシーを育成するために、どのような内容の指導(授業プログラム)を行う必要があるかを検討する目的で、大学1年生を対象として、我々が考案した、6つの題材を用いて約10分で行う健康情報リテラシーに関する授業実践を行い、その効果を検討した(学生の健康情報リテラシーを向上させるためのプログラム開発、愛知教育大学研究報告 66(教). 55-61, 2017)。 中学生の健康情報に対する判断力の実態を明らかにするために、中学生約500名を対象とした質問紙調査を実施した。自作の健康情報に関する批判的思考力テストの誤答分析から、健康情報の見方を中学校での学習で習得するのは難しく、そのための教育機会が必要性を示唆する結果を得た(中学生の健康情報に対する判断力の検討-健康情報に関する批判的思考力テストの誤答分析-、東海学校保健研究 14(1). 95-109, 2017)。 これらの基礎的研究を元に、さらに2017年度は、健康情報が含まれるテレビ映像の教材化の一環として、さまざまなジャンルの映像のHDDレコーダーに蓄積し、これらを数分程度の映像に切り取ることで、保健学習の授業で利用可能かどうかを、中学校1校で実施した。この結果については2018年度中に論文としてまとめる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進歩状況を踏まえ、今後、次のような研究を予定している。 (1) 中学生・高校生を対象とした健康情報リテラシー育成のための教材開発 学校現場では、生徒がインターネットを利用して調べた結果を発表するという形式の授業が、かなりの頻度で行われている。しかし、インターネットを自由に検索して、児童・生徒が得られる情報に、本当に有用なものが含まれる可能性はきわめて少ない。そのため、健康情報を自由に検索して得られる情報の根拠を、再びインターネットで探してその真偽を追求していくような形式の授業では、真の健康リテラシーを身につけさせることは難しいと考えられる。そこで本研究では、加工された多数の健康情報のフレーズや映像情報を用いて、生徒がそのいずれかの健康情報が得られるような授業教材の開発を検討している。また、その健康情報の真偽の根拠となる情報も、同様な仕組みによって、制限された空間の中で、容易に得られるように工夫する。 (2) 健康情報リテラシー育成のためのカリキュラム開発とその実施および評価 すでに本年度から先行して実施しているが、主に中学生を対象とし、保健学習の機会を通じて、研究分担者や協力者(現職教員)による授業実践を行う。地域の異なる複数の公立中学校で検証を行う予定をしている。すでに本研究で開発した開発した健康情報リテラシーを測る尺度(テスト)などを利用し、科学的な効果検証を行う予定である。
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Causes of Carryover |
初年度なので、教材開発に伴う物品費がやや多くなり、代わりに人件費、その他の費用を圧縮して対応した。年度末の残金調整を行っていないので、わずかに使用残が生じたが、概ね計画通りの出費となっている。
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