2021 Fiscal Year Research-status Report
情報モラル教育の学習目標の種類に応じた学習プロセスと学習活動を示した指導法の開発
Project/Area Number |
17K01079
|
Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
梅田 恭子 愛知教育大学, 教育学部, 准教授 (70345940)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | GIGAスクール構想 / 学習者用タブレットの活用 / 学習段階 / デジタル・シティズンシップ |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度はGIGAスクール構想における情報モラル教育を検討した。具体的には次の3点である。 1点目に、学習者用タブレットの活用で求められる学習段階を次の5つのレベルに分けた。レベル1として、操作スキル、最低限の約束づくりといった児童生徒の主体的なICT活用の基礎作りが求められる段階、レベル2として授業の効率化や場面に応じた活用など、まずは使ってみるというICTのインフラ化の段階、レベル3として児童生徒が思考する過程で端末を使うなど、自ら考え、自ら学ぶような授業の段階、レベル4として、各教科で培うべき見方・考え方を深めることができるように学習を進める段階、レベル5として、カリキュラムマネジメントを行い教科横断的な学習に取り組み、テクノロジーを使うことで場所や時間の制約を超え、社会や地域とのつながりをもって学習を進める段階である。このレベル2と3の間には、指導観や学習観の転換があり、レベル3以上になると児童生徒は自ら学習を進めていくようになる。それに伴い、端末を自分の判断で活用していくことが求められる。この際に必要な考え方の一つとして、デジタル・シティズンシップを挙げ、叢書にまとめた。 2点目に、これまでの情報モラル教育の内容を整理し、1人1台環境に対応した新しい情報モラルを検討する一つの参考として、米国Common Sense 財団が提供するCommmon Sense Education*のデジタル・シティズンシップ教材の6領域を参考に取り上げた。これらをセンター紀要の一部としてまとめた。 3点目に、来年度に向けて、高等学校における授業実践を計画し、一部を試行した。 *Commmon Sense Education:https://www.commonsense.org/education/
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度の目標は大きく2つであり、それぞれの進捗状況とともに以下に示す。 まず、GIGAスクール構想により1人1台タブレット端末が導入され、普段の授業で児童生徒がタブレット端末を活用することになった。そのため、情報活用能力も日常的に活用しながら、育成する部分が多くなる。その中で情報モラルをどのように育成していくのかということが新しい検討課題となる。そこで情報モラルを含む情報活用能力の学習場面や発達段階に応じた定義を行うことであった。これについては、まず学習者用タブレットの活用で求められる5つの学習段階を定義し、それに対応づけて主体的に子供が活用するために必要な情報モラル教育について検討した。この研究は、卒業生とともに行い、そして叢書としてまとめることができた。 次に、GIGAスクール構想下における情報モラル教育の内容を再検討することである。これに対して前年度の計画で、デジタル・シティズンシップ教育への拡張も考えられる、とした。そこで、現在の情報モラル教育の内容を振り返った。またCommon Sense Educationのデジタル・シティズンシップ教材の6領域を取り上げ、これらとの共通点と特徴を考える必要性について提起し、これらの過程をセンター紀要に記した。 最後に、Common Sense Educationで提案している思考ルーティーンを参考に、情報社会の中で生じるジレンマを題材として、多様な側面から物事をとらえ、どのようにバランスをとるのか等を考えられることを目指した高等学校における授業実践を計画し、一部を試行した。 以上より「概ね順調」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
一つ目に、GIGAスクール環境下での情報モラル教育の在り方を検討することである。例えば、Common Sense Educationの教材は、メディアバランスとウェルビーイング、プライバシーとセキュリティ、デジタル足跡とアイデンティティ、対人関係とコミュニケーション、ネットいじめ・もめごと・ヘイトスピーチ、ニュースとメディアリテラシーという6領域から構成される。これまでの情報モラル教育を概観し、共通する部分とそれぞれの特長的な部分を分析する。 次に、昨年度本格的に実施できなかった高等学校での実践を進める。OECDのEducation2030プロジェクトの3つのコンピテンシの中に「対立やジレンマを克服する力」が含まれている。同プロジェクトのポジションペーパー*によれば「矛盾した考えや相容れない考えや論理、立場についても、それらの相互のつながりや関連性を考慮しながら、短期的な視点と長期的な視点の両方を踏まえて、より統合的な形で考え行動していくことを学習する必要がある。」とされている。そこで、Common Sense Educationで提案している思考ルーティーンを参考に、情報社会の中で生じるジレンマを題材として、多様な側面から物事をとらえ、どのようにバランスをとるのか等を考えられることを目指した高等学校における授業実践を行い検証する。 この実践や研究、評価は、本学の初等・中等情報の教員養成の学生や大学院生と共に行う。また、研究会などで発表を行い、成果の発表と他の研究者からの情報収集を行う。 *文部科学省:教育とスキルの未来:Education 2030【仮訳(案)】 https://www.oecd.org/education/2030-project/about/documents/OECD-Education-2030-Position-Paper_Japanese.pdf
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は次の通りである。まず、新型コロナウィルス感染症により、出張の自粛や、学会が中止になったりオンライン発表に切り替わったりしたため、出張費がいらなくなったためである。また、授業実践等に関わる謝金も、そもそもの中止や、参加人数の見直しにより、予定より大幅に少なくなった。 2022年度の計画は、2021年度に行ったGIGAスクール構想に対応した情報モラル教育に向けての検討を継続して行うこと、その一部については学習プロセスを示した指導計画を作成し、高等学校での授業実践を行い検証すること、である。そのため、関連する研究に必要な文献や論文を収集する、データ整理や資料整理の補助ために使用したり、授業実践のための教材費、交通費、謝金に用いたりする。学校の状況によっては実践に必要な物品を購入する場合もある。また、本研究では、学生や院生と行うため交通費や謝金が必要である。研究上、実践的な実験が必要になった場合には、参加者に謝金を支払う。 さらに、研究成果を学会等で報告し、最新動向の把握や意見交換を積極的に行う。紀要への投稿も行う。それらの研究成果の発表にかかる費用、別刷り代、場合によっては英語の論文の翻訳費や校閲費に使用する。
|