2018 Fiscal Year Research-status Report
学びのポートフォリオ共有による園と保護者の連携に関する研究
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17K01155
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Research Institution | Aichi Shukutoku University |
Principal Investigator |
佐藤 朝美 愛知淑徳大学, 人間情報学部, 准教授 (70568724)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
椿本 弥生 東京大学, 教養学部, 特任准教授 (40508397)
荒木 淳子 産業能率大学, 情報マネジメント学部, 准教授 (50447455)
堀田 博史 園田学園女子大学, 人間健康学部, 教授 (60300349)
松山 由美子 四天王寺大学短期大学部, その他部局等, 教授 (90322619)
中村 恵 畿央大学, 教育学部, 准教授 (90516452)
松河 秀哉 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 講師 (50379111)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 園と保護者の連携 / ポートフォリオ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、保護者の子ども理解を促すために、園での子どもの体験や学びを共有する方法を検討し、園と家庭が連携するポートフォリオの開発を行うことを目的としている。家庭の連携(Family Involvement)に関わる先行研究からは、園と保護者が「パートナーシップ」の関係性を構築していくことが重要であることが分かった。パートナーシップとは、同等の関係であると同時に、同じ役割を担うのではなく、子どもの成長、学習、発達に相補的な異なる貢献をすることを理想としている。 昨年より現状の課題を検討するために、「i アルバム」システムを導入している園を対象に予備調査を行っており、今年度は、保護者のインタビューを行った。その結果、保護者は、園の情報を得るだけで、十分活用しておらず、保護者からの家庭状況等の情報提供は少ないということが課題として抽出された。 そこで、保護者が園から提供された情報をもとに子どもの成長や学びについて深く考えていくために、園生活や活動の意義、園や先生の役割、保護者の成長と園との関連について振り返る支援を行うワークショップ(以下WS)を開発・実践した。具体的には、「iアルバム」に蓄積された写真を用いてデジタルストーリーテリング(以下DST)の活動を行うものである。「iアルバム」導入園15組(年長親子6組-男児2名・女児4名、年中親子5組-男児2名・女児3名、年少親子3組-男児1名・女児2名)に参加してもらった。WSの事前事後アンケート、DST作品とWSプロトコルを踏まえた保育者のインタビューを実施し、評価データとした。分析の結果、WSにより子どもの成長だけでなく、保護者自身の振り返りが促されている様子がみられた。また保育者からは、本WSのDST作品やWSプロトコルから、「子どもを共に育てる」気持ちを共有できたという見解が示され、ポートフォリオ活用の方法を見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予備調査として、昨年の保育者に加え、今年度は保護者側の課題についても検討を行った。さらに、保護者インタビューで挙がった課題に取り組むべく、家庭の連携(Family Involvement)、子ども理解(Parental Knowledge)、親子対話、自伝的想起(ナラティブ)に関わる先行研究の調査を行いながら、家庭側の活動デザインを検討し、DSTWSの開発・評価を行った。 開発したWSは、保護者の子ども理解を促すために、園での子どもの体験や学びを共有する方法を検討する本研究の目的に関わると同時に、親自身の成長にもつながる可能性が示唆された。また、本WSにより保護者が蓄積された記録を有効活用し、保護者自身の気持ちを保育者が共有することができた。保護者が園活動をどのように捉えているか聞く機会が少ない状況である保育者にとって、新たな発見があると同時に保育への自信に繋がる可能性も示唆された。昨年の保育者インタビューでは、記録をポートフォリオに蓄積していく際の負担も課題に挙がっていたが、保護者の反応を見ることで、負担感の軽減、さらには記録していくことにポジティブな動機を持てる可能性も示唆された。さらには、ポートフォリオの活用により、保護者と保育者のやり取りが、非同期的なものも含め、増強されていく方法を検討できたものと考える。 以上から、園と連携するポートフォリオを開発するために重要な、蓄積されたデータを保護者が効果的に活用する方法について検討することができた。今後は、連携の全体像をデザインするとともに、ファミリー・ポートフォリオ拡張機能の要件を導き出していく。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、本来の目的である「保育記録における写真データを有効活用し、子どもの学びを見取る視点・発達観を付加した情報を保護者に提供するポートフォリオを構築する」に戻り、これまでに行った予備調査の結果を整理する。また、過年度研究で構想しているファミリー・ポートフォリオにどのように組み込むかを検討し、持続可能な方法に向けての改善案を導くべく、プロトタイプを作成する予定である。最終的には、評価データの分析とともに論文化を行う。また、連携支援システムの知見を紹介するWeb化等周知を行うことで、園での子どもの体験や学びの軌跡を可視化するポートフォリオを用いた保育者と家庭の連携の普及に努める予定である。
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Causes of Carryover |
3月末に行ったデジタル・ストーリテリングワークショップの実践を行った際の出張費、及び、評価のための保育者インタビュー9名分の文字起こし代が、4月以降の精算に繰り越しになったため、次年度使用額が生じた。 翌年度に出張や文字起こし代金等の未処理分を対応する。また翌年度にはポートフォリオの最終構想を行うために成果をまとめる作業を行う。Web構築等の作業費や論文化、製本代、学会での成果発表等での費目で使用する予定である。
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