2017 Fiscal Year Research-status Report
誰でも実践できる虫害防除のための文化財保管環境の創出に関する実験的研究
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17K01200
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
魚島 純一 奈良大学, 文学部, 教授 (10372228)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 文化財保存環境 / IPM / 虫害防除 / 環境管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、博物館や資料館、寺院など、文化財を保管するさまざまな施設で、設備の拡充や人員の増強などの負担なしに、簡便かつ確実に、そして安全に虫害防除を目的とした適切な文化財保存環境をつくりだし、それを維持できるようにしようとするものである。具体的には、低酸素濃度処理に用いるガスバリア性の高い袋内に文化財を密封保管し、虫害を防ぐ環境をつくりだすとともに、その袋内の温湿度環境の安定をはかり、専門職員なしでも文化財を虫害から守ることができるようにしようとするものである。 虫害防除については、本研究の開始前からおこなってきた予備実験ですでに一定の効果が確認できているため、本研究のおもな目的は袋内の湿度環境の安定について確認し、必要に応じて対策を検討することにある。 初年度はデータロガー設置がおもな内容であった。研究開始後、すでに予備的実験をおこなっていた博物館施設等での継続実験をおこなったほか、新たにいくつかの施設で調査を開始した。温湿度環境調査はデータロガー設置後1年間おこなう必要があるため、現在、施設内と袋内の温湿度データロガーによる温湿度環境調査を継続中であり、1年経過後に回収し、得られたデータを解析する予定である。 あわせて袋内の温湿度の安定をはかるため、当初は予定になかった既製品を流用した安価な中性紙保管箱の導入を検討するための予備実験も始めた。今後、袋内に封入する文化財を安価な中性紙保管箱に入れた上でおこなうことによって、湿度の安定にどのような影響が出るかを確認し、手法の確立にこぎつけたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
すでに予備的実験をおこなっていた博物館施設等での継続実験を、兵庫県新温泉町湯区薬師堂でおこなったほか、新たに岐阜県可児市教育員会文化財保管庫、奈良県山添村歴史民俗資料館で開始した。文化財を保管する施設と袋内の、温湿度データロガーによる温湿度環境調査を継続中であり、設置後1年で回収し、得られたデータを解析する予定である。 当初、研究協力を予定していた施設のうちいくつかは、空調設備を伴う収蔵庫を持っていたことから、あえて専門職員も不在で、まったく設備を持たない施設での実験を優先した。そのため、調査が3カ所にとどまっている。 次年度以降、調査機器に余裕があれば、空調設備をもつ施設でも同様の実験をおこないたい。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、温湿度データロガーによる温湿度環境調査を継続中であり、これまでに設置したものについては、設置後1年で回収し、得られたデータを解析する予定である。 袋内の温湿度環境が安定していた場合はそのまま継続し、さらに実験を拡大したい。安定していなかった場合は、調湿剤や新たに導入を検討中の中性紙保管箱等を利用して、湿度の安定をはかる対策を検討する。 また、これまでに得られた途中成果は、学会で発表(文化財保存修復学会第40回大会で発表予定)し、関係者からの評価を確認したい。
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Causes of Carryover |
当初、研究協力を予定していた施設のうちいくつかは、空調設備を伴う収蔵庫を持っていたことから、あえて専門職員も不在で、まったく設備を持たない施設での実験を優先した。そのため、設置できた施設が3カ所にとどまり、研究代表者のみでおこなった調査が多くなったため、想定していたよりアルバイトを雇用する時間が少なかったため、おもに旅費と人件費の支出が当初計画よりも少なかった。次年度以降、可能であれば、空調設備をもつ施設でも同様の実験をおこないたい。
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