2019 Fiscal Year Research-status Report
バブル崩壊の予測とバブル崩壊がマクロ経済に与える影響の研究
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17K01270
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
海蔵寺 大成 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (10265960)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | バブル / バブル崩壊 / 企業のファンダメンタルズ / リーマンショック / マクロテイルリスク |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、前年度までに開発した企業のファンダメンタルズを計測する計量モデルを基礎に、株式時価総額を説明するパネル回帰モデルを開発し、企業のファンダメンタルズを反映する適正な株式時価総額を計算した。次に、実際の株式時価総額が、ファンダメンタルズから計算される株式時価総額から乖離するかどうかを分析する。実際の株価時価総額と企業のファンダメンタルズに基づく適正な株価時価総額の乖離の分布を時系列的に分析し、リーマンショック前の乖離の分布が大きくプラスの側に位置していたのに対し、リーマンショックには大きくマイナスの方向にシフトしたことがわかった。このことから、株式時価総額と適正な株式時価総額の乖離率を示す分布が正の方向にシフトしている時期は、株式市場がバブルを起こしている可能性が高く、株式市場の急落のシグナルとして考えることができる。 次に、Gabaix(2011)が提唱したGranular仮説が株式時価総額について成立しているかどうかを検証した。初めに、株式時価総額の分布がパレート分布に従っていることを確かめた。次に、株式時価総額の適正な株式時価総額からの乖離を説明変数(株式時価総額のGranular residual)、株式時価総額の変動を被説明変数として回帰分析を行った結果、株式時価総額が大きなtop企業(例えば、top 100社)の時価総額の変動が、市場全体の株式時価総額の変動の約70%を説明していることがわかった。この研究を通じて、株式市場において、Gabaix(2011)が提唱したGranular仮説が株式市場においても成立していることが確かめられた。これらの研究成果を国際会議WEHIA2019で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、次の4つである。(i)企業のファンダメンタルズを実際の企業の財務データから数値的に推定する計量モデルを開発すること、(ii) 企業のファンダメンタルズを組み込んだ「バブルの発生と崩壊のモデル」を構築すること、(iii) 開発した理論モデルを用いて株価とファンダメンタルズの乖離を統計的に示すと同時に、バブル崩壊を予測すること、(iv) バブル崩壊が企業収益とマクロ経済に与える影響を定量的に示すこと、である。 特に、2019年度の研究成果として、Gabaix(2011)が提唱したGranular仮説が株式市場においても成立していることが確かめられ、株式市場のMacro tail riskの存在を確かめることができた。 これまでの研究を通じて、本研究課題の目的をほぼ達成できたと考えている。論文作成に予想より多くの時間を取られているが、研究成果は予定通り進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要で述べたように、これまでの研究で、株式市場におけるバブルとバブル崩壊を計量的に示す計量モデルを開発し、さらにGabaix(2011)が提唱したGranular仮説が株式市場において成立していることが確かめられた。本年度までの研究を通じて、株式市場のMacro risk tailの存在を確かめることができた。 2020 年度の研究として、バブル崩壊が企業収益とマクロ経済に与える影響をさらに研究する予定。また、これまでに得られた研究成果を論文等にまとめ積極的に発表する予定である。
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Causes of Carryover |
研究はおおむね予定通り進捗したが、研究代表者の本務校での職務の関係で国際会議などで発表する機会が限られ旅費等の支出が予定より少なかったこと、研究成果を論文等にまとめるために予定より時間を要しることで論文校正や投稿費用などが予定よりも少なかったため、次年度使用額が生じた。翌年度はこれまでの成果を積極的に学会や論文誌当で発表するために助成金を使用する予定である。
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