2018 Fiscal Year Research-status Report
M9超巨大地震の長周期地震動ー観測・計算融合の波動物理に基づく統合モデル構築
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17K01322
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古村 孝志 東京大学, 地震研究所, 教授 (80241404)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 長周期地震動 / PL波 / 強震動 |
Outline of Annual Research Achievements |
地殻内大地震のP波直後に観測される長周期地震動(PL波)の成因と伝播特性を、強震波形データ解析と地震波伝播シミュレーションにより評価した。一般に、長周期地震動は、S波の後から遅れて到達する「後揺れ」現象として知られている。しかし、2004年新潟県中越地震の強震波形には、P波の到達直後から周期5-10秒程度の大振幅の長周期の波群が認められ、観測点によっては、後続の表面波と同程度の振幅を持つ。この波群はRadialと上下動成分に見られ、弱い正分散性とProgradeの震動軌跡を持つことから、PL波と判断された。PL波は、地殻を広角反射しながら伝播する波であり、表面波の方程式の虚数解に相当する"Leaking mode"として解釈される。新潟県中越地震によるPL波の生成・伝播を、日本の地殻構造モデル(JIVSM)を用いた3次元地震波動伝播シミュレーションにより評価した。そして、地殻内の浅い震源から放射されたS波が地表でSP変換を起こし、これが地殻内で広角反射(PmP)を起こし、そして変換S波と地殻内で干渉を起こすことで、長周期のPL波が生成する過程を確認した。堆積層によりSP変換効率が大きくなり、これが大振幅のPL波群を形成することも確認した。PL波は、Rayleigh波と同様に震源の深さに敏感である。この性質を用いて、P波の到着直後に観測されるPL波の震幅から後続する長周期地震動(Rayleigh波)の震幅を予測するなど、長周期地震動の即時予測への活用も期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の年次研究計画に沿って、M9巨大地震の長周期地震動の成因に関しておおむね順調に研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
内陸地震や海溝型巨大地震による長周期地震動の一定の評価を終えたことから、次の段階として深発巨大地震による長周期地震動の生成要件を、近年の広帯域観測網により記録された地震波形記録(2013年オホーツク海深発地震など)と、大規模領域の波動伝播シミュレーションに基づき検討する。
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Causes of Carryover |
国際学会出張の予定であったが、本研究の地震波形解析の時間を充当することとした。助成金は翌年度分に繰り越し、地震波伝播計算のための計算機借用料に使用予定である。
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