2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of the technique for the assessment of fault activity using the formation age of clay minerals in fault rocks
Project/Area Number |
17K01326
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
福地 龍郎 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (90212183)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 活断層 / 断層ガウジ / 粘土鉱物 / モンモリロナイト / カリ長石 / 熱水反応 / ESR / ESR年代測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
活断層の絶対年代測定に利用できるモンモリロナイト起源の四重信号(Mo四重信号)が,糸静線活断層系白州断層の断層ガウジ中の変質カリ長石(正長石)から検出されることが判明した前年度の結果を受けて,同ガウジ試料の源岩である鳳凰型花崗岩から新鮮なカリ長石を重液SPTを用いて抽出し,ガンマ線照射によりMo四重信号が検出されないことを確認した後,様々なpH条件で高温熱水反応実験(250℃,2週間加熱)を実施した。その結果,純水(H2O)及び10~20%HCl水溶液中での熱水反応後の試料からはガンマ線照射によりMo四重信号は検出されなかったのに対して,10%NaOH水溶液中での熱水反応後の試料からはガンマ線照射によりMo四重信号に類似する信号群(各信号の磁場間隔は異なる)が検出されることが判明した。また,6%NaOH水溶液中における熱水反応後の試料からは,ガンマ線照射によりMo四重信号とは異なる単一のESR信号が検出されることが明らかになった。 熱水反応後の各試料のX線粉末回折(XRD)分析を実施して構成鉱物を調べた結果,6%NaOH水溶液下の熱水反応試料からは方沸石のXRDピークが,また10%NaOH水溶液下の熱水反応試料からはカオリナイトのXRDピークがそれぞれ検出された。方沸石はアルカリ変質帯で生成されることが知られており,カリ長石(KAlSi3O8)を構成するAlイオンがNaOHと反応してNa[Al(OH)4]が形成され,さらに方沸石(Na[Al2O6]・H2O)が生成されたと考えられる。一方,カオリナイトは通常酸性変質帯で生成されるが,AlイオンとNaOHの反応により水素が生成されることが知られている(2Al+2NaOH+6H2O→2Na[Al(OH)4]+3H2)ので,AlイオンとNaOHの反応が進行して水溶液がアルカリ性から酸性に変化してカオリナイトが生成されたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度まで難航していた高温熱水反応による粘土鉱物とESR信号の生成実験が試行錯誤の末に成功したことで,粘土鉱物とESR信号が生成・出現する条件が概ね明らかとなり,今後の熱水反応実験の見通しが立ったことが主な理由である。また,新型コロナ感染拡大防止に伴う規制が緩和されたことに加えて,補助事業期間の再延長が認められたことで,遅れが生じていた研究計画を本来の軌道に戻すことができ,当初の実験計画を完遂できる目途がついたので,おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は,令和3年度に引き続いて,新鮮なカリ長石(正長石)及び花崗岩試料を用いた熱水反応実験を実施し,熱水反応後の試料のガンマ線照射実験を行う。熱水反応実験では,加熱温度及び時間やpHが異なる複数の条件下で実験を行い,熱水生成した粘土鉱物のXRD強度の変化をXRD分析により明らかにする。 また,熱水変質カリ長石(正長石)から検出される四重信号とモンモリナイト起源の四重信号(Mo四重信号)の関係を明らかにするために,Mo四重信号が検出されないモンモリナイトを用いて各種条件下で熱水反応実験を実施する。 さらに,熱水反応実験により粘土鉱物が生成する温度と時間の関係式(アレニウス式)を求め,断層岩試料採取地点の地温勾配及び隆起速度データとアレニウス式から各粘土鉱物の生成年代を見積もる。 最後に,熱水変質カリ長石(正長石)やモンモリロナイトから検出される四重信号を用いたESR年代測定の実施結果と粘土鉱物の生成年代との比較検討を行い,粘土鉱物の生成年代を指標にした断層活動性評価法の可能性について検討する。
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Causes of Carryover |
令和3年度は,新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出規制があり,ESR解析や熱水反応実験に使用する試料のサンプリングが計画通り行えなかったために,業者に外注する予定であった定量分析が行えず,次年度使用額が発生した。 次年度使用額については,各種分析や実験に使用する断層岩関連試料の採取に必要な旅費として使用する他,実験装置の消耗品費用やESR年代測定を実施する際に必要となる放射性元素濃度の定量分析の外注費用として使用することを計画している。また,現在解析中の断層ガウジ試料からイライトが検出された場合には,K-Ar年代測定の外注費用として使用することを計画している。
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Remarks |
糸魚川-静岡構造線の研究 http://www.ccn.yamanashi.ac.jp/~tfukuchi/sub3.htm
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