2018 Fiscal Year Research-status Report
水域ネットワークを構成して底質を一括走査する協調型環境調査船システムの開発
Project/Area Number |
17K01346
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Research Institution | Yuge National College of Maritime Technology |
Principal Investigator |
田房 友典 弓削商船高等専門学校, 情報工学科, 教授 (20321507)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 環境調査 / 水域ネットワーク / Zigbee / 底質調査 / 協調船 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,災害や事件が発生したときの緊急の底質調査,大型船が運航できない港湾などの浅瀬,湖や河川等の底質調査を短時間かつ高精度で行うことを目的とする.平成29年度,新たに船体構造の設計と2隻の調査船の構築を行った.また,複数隻の調査船と陸上との通信方法を検討し,1対多による水域ネットワークの構築をした.さらに調査船のモニタリングを行うソフトウェアの開発を行った.平成29年度の成果を用いて,平成30年度の2点研究実績について概要を記す. 1)開発した調査船とモニタリングソフトを用いた実証実験,調査対象となる山岳地帯の湖として御釜(宮城県刈田郡蔵王町)の底質調査を実施した.調査は車で行くことができる地点まで移動し,約1200mの調査地点までの移動距離を,調査船を分解して約1時間かけて徒歩で移動した.調査船はリモートコントローラーで適切に制御できたが,開発したモニタリングソフトは描画に遅延があり,調査船の動きとは一致せず,操船の支援を行うことはできなかった. 2)自律制御による直線航行と緊急時対応処理,目的地(ウェイポイント)をGPS値で設定し,現在地からウェイポイントまでを直線航行するアルゴリズムの開発を行った.考案したアルゴリズムを開発した調査船に組み込み,海上で実証実験を実施した.また,リモート操船中に調査船とコントローラの距離が離れすぎて操作不能となるケースを想定して,緊急停止するアルゴリズムについて検討し,実証実験を実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度における進捗状況を「やや遅れている」と評価した理由について,2点の研究実績の概要に対して,それぞれ述べる. 1)開発した調査船とモニタリングソフトを用いた実証実験,実証実験対象とした御釜の底質調査を実施した.調査地点までの移動距離は約1200m,高低差が約200mある斜面を分解した調査船,PCや工具を6名で約1時間かけて徒歩で運搬した.開発したモニタリングソフトを調査船が目視できる範囲内で,御釜を走査しながら性能調査を行ったが,描画に遅延があり調査船の操船を支援するには十分ではなかった.御釜の最大直径は約330mあり,調査船の安定した通信距離仕様は約300mであるため,レーザー距離計で調査船位置を計測しながらリモート制御を行った.双頭型の左右のフロートに色分けをしたペイント行っていたため約200mまでリモート操船可能であったが,航行している調査船の情報(船首方位や速度)を操船側で取得できれば,300mまでの走査が可能となる. 2)自律制御による直線航行と緊急時対応処理,目的地(ウェイポイント)をGPS値で設定し,現在地からウェイポイントまでを直線航行するアルゴリズムの開発を行った.研究計画では,先行研究であるアルゴリズムを活用する予定であったが,操船制御を舵から2軸モーターの制御に変更したため,新たなアルゴリズムの開発に時間を要した.また,調査船が軽量化されたため,風や潮の流れなどの外部環境の影響を受けやすく時間帯が変わると同じ制御でも同じ結果が得られない.陸上からの制御信号が途絶えた時に緊急停止する制御は可能であったが,電波状態による誤認識が発生することがあり改善が必要である. 以上のように,計画通りの研究遂行ができなかった点,モニタリングソフトが操船を支援できる仕様を満たさなかったため,「やや遅れている」と評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度の研究実績において開発した調査船の仕様について,実験において計画通りのリモート制御が可能であり,適切であることが実験により実証できた.現在,自律で航行する調査船の研究に着手しているが,新たな推進方法の導入や軽量化による弊害によって研究の進捗がやや遅れている.しかし,実験を重ねる毎にノウハウも蓄積されているため,最終年度に予測される成果を得る計画である. 1隻における自律制御は,波や風の影響が小さい場合は予測される結果を得ることができ,概ねアルゴリズム開発は予測の範囲内であると考えている.今年度は,旋廻制御のアルゴリズムの開発を行う.2機のモータを利用するため,従来法である舵制御に比べて遅延が少なく直進制御のアルゴリズムが応用できると想定できる.海上での実証実験によって考案アルゴリズムを改良し,直進と旋廻制御の組合せによって自律的に走査できる調査船を開発する.また,同時にモニタリングソフトの描画速度の改修にも取組む. 複数隻の協調制御は,調査船同士の位置関係の相互通信と画像処理による支援制御を行う.主となる調査船の特徴量を事前に把握できていれば,画像処理を用いて協調する技術は,比較的容易であると想定している.複数隻における衝突防止機能や緊急停止機能も組み込み,環境調査船システムを開発する. 全ての実験において,波や風などの気象条件の影響が大きく,目的とする結果を得ることができる気象条件の範囲を明らかにすることが重要である.実験によって協調船のアルゴリズムを実証し,研究成果をまとめる.
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Causes of Carryover |
平成30年度は,ほぼ計画通りに予算の執行を行い,平成29年度に繰越した金額が残高となった.計画と異なるのは主に旅費であり,研究成果を広く公開するために今年度は,繰越金を利用する計画である.
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