2017 Fiscal Year Research-status Report
におい分子を自在に操る“貼るナノ透明体”の創製と実装化
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17K01392
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
岡村 陽介 東海大学, 工学部, 准教授 (40365408)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ナノ透明体 / 環状オリゴ糖 |
Outline of Annual Research Achievements |
“におい”は人類の生活と密接に関与している。特に最近、体臭(加齢臭・汗臭等)や生活臭などの不快な臭いを消し、好みの香りをつけて個性を演出するなど、皮膚に塗布・噴霧する脱臭・芳香剤が市場を賑わすほど“におい”は注目されている。しかし、汗などで有効成分が流れてしまうほか、におい分子は揮発性のため、その持続効果が不十分であるという課題が残されている。本研究では、におい分子の吸着・徐放を自在に操る“貼るナノ透明体”を創製、実装化を目指す。具体的には、どこにでも貼れるナノ透明体に、有効成分となるにおい分子包接体(環状オリゴ糖等)を搭載し、各種におい分子の吸着・徐放能を持続させる仕組みを提案する。 貼るナノ透明体として、多糖からなる超薄膜を創製した。具体的な工程を以下に示す。酢酸セルロース溶液をSiO2基板上にスピンコート法で成膜し犠牲層とした。続いて、多糖水溶液をスピンコート法で成膜した。架橋剤と環状オリゴ糖の混合溶液に、触媒としてトリエチルアミンを基板上に滴下し、加熱した。アセトン中に浸漬したところ、基板の形状を維持したまま超薄膜を回収することに成功した。得られた超薄膜は、透明な構造であり、皮膚などの界面にも貼付できることから、貼るナノ透明体であることを実証した。超薄膜上に芳香におい分子であるリナロールを滴下し、揮発挙動をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、滴下後数時間以降から揮発の延長効果が発現した。これは、超薄膜上に表面修飾した環状オリゴ糖によって、揮発が抑制されたことを支持している。従って、芳香成分を長時間徐放させ得る構造体であることを裏付けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、貼るナノ透明体のひとつとして多糖からなる超薄膜を提案し、環状オリゴ糖を超薄膜に表面修飾する技術を確立した。また、におい分子の吸着・徐放特性の評価系を立上げた。得られた超薄膜は、芳香成分を長時間徐放させ得る構造であることを実証した。したがって、本年度の研究目標は計画通りに達成され、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、貼るナノ透明体の脱臭効果を検証するとともに、脱臭と芳香を併せもつ新規ナノ透明体を提案する計画にある。また、比表面積を増大させ得るナノ透明体の開発にも着手する計画にある。におい分子の吸着・徐放特性の評価系は確立しているため、ナノ透明体の完成し次第、機能評価を遂行する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額がわずかに生じたが、ほぼ計画通りに使用したと判断する。 次年度、計画通り遂行すれば、差は生じないと考える。
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Research Products
(4 results)