2018 Fiscal Year Research-status Report
赤外ATR測定による非侵襲血糖測定の精度向上のための糖代謝機序解明の試み
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17K01403
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
木野 彩子 東北大学, 医工学研究科, 学術研究員 (30536082)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松浦 祐司 東北大学, 医工学研究科, 教授 (10241530)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非侵襲血糖測定 / 中赤外ATR |
Outline of Annual Research Achievements |
摂食の前後で変化する間質液内の糖類の濃度に体の外からアクセスし,実際の採血により測定した血糖値推移との関係を観測することにより,非侵襲な血糖値測定システムの実現を目指した.体表部の間質液内の糖類濃度の決定には赤外分光ATR法を用いている.また測定対象部位としては装具によりプリズムの押付圧力を一定に保ちつつ,連続測定も可能な耳たぶを選択した.プリズムの材料や形状と並行して赤外光の照射/受光角度の最適化を行うことで高いS/N比を実現し,間質液中で0.1%前後という低濃度のグルコース由来の赤外吸収ピークを,重畳する数多くの物質から識別することに成功した. 識別した糖類由来の吸収強度から推定される間質液中の糖濃度と,採血による血糖値との間には一部まだ乖離があり,特に摂食前の空腹時と食後3-4時間ほどの時点で,血糖値は低いのに対して大きな赤外吸収を示す場合が多いことが分かった.これを既知の糖代謝機序と照らし合わせ,間質液中に常に含まれる糖代謝中間生成物質やタンパク質,脂質等の赤外吸収スペクトルと比較検討を行ったところ,食前ではグルコースをエネルギー源として組織細胞内に備蓄する際に形成される多糖類グリコーゲンが,食後3-4時間では食事由来の脂質濃度がそれぞれ最大値を示し,間質液の光吸収の大きさおよびスペクトル形状に多大な影響を与えていることが分かった.これらの影響を除去して初めて,間質液中の糖濃度から正しい血糖値が推定できるといえる. また,体表部から得られた間質液のスペクトルに対して多変量解析を行ったところ,各々の糖代謝中間物質が最大となる食後時間や,糖類以外の物質由来のスペクトルの時間変化に関して知見が得られ,これらは上述の推論を裏付ける結果となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に対して,目標としていた取得サンプル数にはわずかに届いていないものの,代謝機序解明に伴う間質液スペクトルの解析手法構築に関しては開始時の推論を裏付ける複数の結果が得られ,予想以上に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
健常者/糖尿病罹患者ともに取得サンプル数を増やすとともに,システムの実用化に向けこれまでに構築されたスペクトルの解析方法が適用可能な範囲を正確に判断する.また,代謝解析モデル構築のなかで得られた情報をもとに,糖以外の物質に対する非侵襲モニタリング方法に関しても検討を進める.
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Research Products
(15 results)