2018 Fiscal Year Research-status Report
超高感度光ポンピング磁気センサを用いた完全非接触型3次元断層画像化技術の開発
Project/Area Number |
17K01421
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
根武谷 吾 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 客員研究員 (00276180)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 寛 三重大学, 医学部附属病院, 教授 (00184804)
熊谷 寛 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (00211889)
新井 正康 北里大学, 医学部, 教授 (50222724)
小池 朋孝 北里大学, 大学病院, その他 (90523506)
岩下 義明 三重大学, 医学系研究科, リサーチアソシエイト (90525396)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 生体磁気計測 / 電気インピーダンス / 光ポンピング原子磁気センサ / OPAM / 断層画像 / 高感度磁気センサ / 非接触定電流印加 |
Outline of Annual Research Achievements |
EIT(Electrical Impedance Tomography)とは、生体に微弱な電流を流して体表面上に生じる電位差を測定し、その結果を用いて生体内の導電率分布を画像化する方法である。EITは、X線CTなどのように被曝の問題がなく、小型化やベッドサイドでの連続的な測定、長時間測定が容易であるという利点がある。現在は主に肺内のガス量変化、つまり換気の分布をベッドサイドで連続的にイメージングして人工呼吸管理に活用するという応用がなされている。しかしEITでは、電極と皮膚の接着状態の問題や、測定用ベルトを巻いた位置のみの断層画像しか得ることができないといった問題点がある。 そこで、電極と皮膚を接触せずに体表から定電流を印加し、生体内の電流密度分布(導電率分布)に応じた微弱な磁場分布を生体の外側から非接触で測定し、電磁界の逆問題を解いて生体内の導電率分布を求めるCIMT (Current Induced Magnetic Tomography:電流誘導磁気トモグラフィー)を提案した。これにより、全身の断層画像を非侵襲、無被曝で得ることが可能となる。 CIMTに用いる磁気センサには、小型・低コストが期待できる超高感度な光ポンピング原子磁気センサ(Optically-Pumped Atomic Magnetometer :OPAM)が適していると考えられた。OPAMはアルカリ金属原子の価電子の光ポンピングと、それによる磁気光学回転を利用したセンサである。OPAMは極低温でなくとも理論上10aTの超高感度を達成可能とされているが、これらの計測は100Hzまでの低周波かつ精密固定・磁気シールド下において達成されたものである。 これに対し本研究ではCIMTの実現を目指し、より高周波信号に対応可能かつ測定部をモジュール化したOPAMの開発を行い、その評価を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
光ポンピング原子磁気センサ(OPAM)は室温下で高感度を達成し、かつ理論上数十MHzにも及ぶ帯域を持つため、高周波生体磁気計測に適していると考えられる。しかしOPAMは多くの光学部品を精密固定する必要があり、プローブのように自由に動かすことは困難である。 そこで今年度は、昨年度試作したOPAMからさらに小型化と光学系の簡素化をはかるため、3Dプリンターを用いて10cm×6cmのABS製筐体を作成し、そこに光学系・制御回路および測定回路を内蔵したハンドヘルドサイズのOPAMモジュールを開発した。そのOPAMモジュールを用いて500Hz、3 uTの交流磁気信号を印加した結果、約0.3mVp-pの出力電圧つまり約0.1mV/uTの感度があることがわかった。しかしながらCIMTを実現するためには、測定周波数100kHz以上かつ1000倍程度の感度向上が必要であると考えられる。このため、PLL(Phase Locked Loop)回路を設計してきたが、機能実現が次年度になった。 一方本研究では、非接触定電流回路の改良も進めてきた。従来の定電流回路では、82mm*37mmのフレキシブル基板電極を用いて、周波数450kHzの正弦波かつ電極間距離30cmにおいて、最大約0.2mAp-pの電流印加が可能であった。しかし今年度開発した定電流回路は同条件で最大約1.6mAp-pと8倍の電流強度を実現した。この条件下で測定電極間中央に120mm角水深70mmの水槽を入れた場合、約0.03%のインピーダンス変化が認められた。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度はまず、昨年度末から設計・開発を進めているPLL回路を実装すること、OPAMモジュール内部の光学系・電子回路系の配置精査と電磁シールドの設置ならびに光ファイバ通信による絶縁を試みる。これにより、SN比の大幅な向上を目指す。また測定周波数を450kHzまで増加させる。 これまでの研究では、光ポンピング原子磁気センサを用いたベンチ実験において1MHzまで測定可能であった。このため、前述の対策によって高周波化が実現可能であると考える。さらにガード電極技術などを加えることで、非接触定電流回路の高感度化を進める。 次に、OPAMおよび非接触定電流回路の多チャンネル化をはかる。これにより、CIMTの実現可能性を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
今年度は、OPAMの感度向上のために計画したPLL(Phase Locked Loop)回路の仕様設計に時間を要したため、設計・試作が実現できなかった。そこで今年度はその研究費も合わせてPLL回路の試作とOPAMへの実装実現に使用する。
|
Research Products
(6 results)