2018 Fiscal Year Research-status Report
視覚障碍者のための屋内ナビゲーション装置の開発研究
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17K01557
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
牧野 秀夫 新潟大学, 自然科学系, フェロー (80115071)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 義信 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90303114)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 可視光通信 / 屋内測位 / 視覚障碍者 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画は,以下の具体的な2テーマに分類した. 1)スマートフォン型可視光受信器開発,2)スマートフォン用応用ソフトウェア開発. 方法としては,初年度の平成29年度には,まず1)のスマートフォン型可視光受信機器の設計を重点的に行い,屋内における可視光通信を用いた自己位置特定方法,測位精度向上のための他のセンサとの融合,ならびに画角を等価的に拡大するための基本設計とそのシミュレーションを実施した.並行して,開発する受光器を用いた位置測位アルゴリズムの検討と実際に装置を設置した基礎計測実験を行った.また2)のスマートフォン用応用ソフトウェア開発については,研究代表者が主催する国際会議に,ユーザの視点からFAA(アメリカ連邦航空局)の専門家,アメリカ・メイン大学の視覚障碍者の教授,オランダのフィリップス社の担当者などをそれぞれ招聘した.これにより,ユーザの視点からソフトウェア開発指針を取りまとめることができた. 次に平成30年度では,限られた開発資金と時間を機能実現に集中し,照明のチラツキを極力低減した可視光通信環境におけるスマートフォン型受信機による方位検出に関する研究を行った.また,実際に視覚障碍者が受信機を把持する際の手振れの影響を防止する方策としてジャイロセンサと回転不変位相限定相関法について検討した.以上,研究開始年度後半に国際会議を開催したことにより,平成30年度も含め可視光通信による視覚障碍者歩行支援に関する方策と装置開発に関する多くの知見をまとめて得ることができた.また,研究全体の方向性をまとめることができたと考える.タイムスケジュールとしては,最初の2年間が受光部の実現ステージ,後半の1年が動作ソフトウェアテスト・改良ステージである.今後は,本研究の成果をより実用化に近づけるために,海外における関連学会の研究・調査を実施し,さらに研究発表を継続する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は,ハード面ではスマートフォン型可視光受信器による方位検出と測位誤差低減に焦点を絞り研究を行った.まず,屋内での地磁気センサのみによる方位検出では,鉄筋や他の電子機器の影響等で誤差が拡大する.また,画像処理によるランドマーク検出法は,現時点では処理速度ならびに参照用データ取得の問題が残る.そこで,本邦の照明基準を満足する照明器具自体を個々のランドマークとして捉え,その配置から方位を算出する方法を試みた.具体的には,従来開発したLED照明型通信システムを基に,視覚障碍者が地下街などの領域を受光器を把持した状態で歩行する場合を想定した基礎実験を行った.ここでは,日本独自の厳密な照明基準を満足する環境で,低フレームレートのスマートフォンカメラのみによる方位検出を試みた.その結果,計測誤差10度以内での方位検出が可能であった(IPIN2018).この方式を魚眼レンズを装着したスマートフォン画像と組み合わせることにより実用的な応用が可能である.次に,受光器を把持した状態での手振れの影響を防止する方法について検討した.基本構成としては,ジャイロ計測を併用し入力画像に対する回転不変位相限定相関法(RIPOC)を用いた手振れ補正方法を提案した(通信学会大会).その結果,3mの距離でリアルタイム光源追跡が可能なことを確認した. 一方,研究代表者が組織委員を務める屋内測位・ナビゲーション国際会議(IPIN2018)における講演ならびに装置実用化の動向では,可視光通信に関する基本的な部分(照明光の変調基準)での本邦との仕様の違いが明らかとなった.すなわち,海外で応用されている可視光通信による屋内測位方法は,日本の照明基準を満足できないため,日本国内での公共の場所では使用できない.この点は,今年度開催されるIPIN2019(イタリア,ピサ)にて再度装置改善のための討議を進める予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は,1)スマートフォンによる音声案内用ソフトウェアの改良,2)国際会議における新たな開発指針の提案である.具体的には,平成29年度,平成30年度までの研究を通して得られた知見をより広く活用するための啓蒙活動を行う.特に,屋内案内用ソフトウェア開発については,平成30年の感覚代行シンポジウムで改善が指摘された視覚障碍者自身による位置情報入力とそれらを管理するデータベースの安定した実現方法について提案する予定である.具体的には,現在,国立情報学研究所が進めている科学技術情報ネットワーク(SINET)直結のモバイル実証実験に参加して,屋内位置情報と組み合わせた音声案内情報入力方式をスマートフォンにより実現する予定である.さらにESRIジャパン社の提供するクラウド形地理情報システムを使用して,視覚障碍者が容易にデータを保存・管理するシステムの基本構成を提案する.以上,ここまでの可視光通信の開発状況を総括すると,ハードウェアに関する装置開発は概ね実用化段階であり,本邦の照明基準の特殊性はあるが,類似のディジタルサイネージによる情報提供は2020年の東京オリンピック・パラリンピックで提供される予定である.ただし,これらをより視覚障碍者向けの社会インフラとして定着させるためには,開発されたハードウェアシステムを経済的にも運用可能な応用ソフトウェアの提供が不可欠である.従って,2019年の最終年度は,これらのソフトウェア開発に注力し,次の時代への提案を行っていく予定である.
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Causes of Carryover |
1) 本研究に関し共同研究を行っている中部大学において講演を行った際,発表旅費の提供を受けた.また,モバイル通信実験のためのタブレット端末などネットワーク関連費用負担が年度をまたいで翌年となったため,次年度使用額が生じた. 2) 次年度使用額については,追加実験ならびにソフトウェア開発に使用する予定である.
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Research Products
(4 results)