2018 Fiscal Year Research-status Report
広義のインクルーシヴ体育における資質・能力育成の実証的研究-ケアに着目して-
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17K01629
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
梅澤 秋久 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (90551185)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中道 莉央 びわこ成蹊スポーツ大学, スポーツ学部, 准教授 (30550694)
村瀬 浩二 和歌山大学, 教育学部, 教授 (90586041)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 共生 / インクルーシブ / 体育 / ケア / ケアリング / アダプテーション / スポーツ |
Outline of Annual Research Achievements |
体育における真正のインクルーシブでは,単に障がいの有無だけではなく,性差,年齢差,国籍/文化の差異,運動/体力格差等,多様な「ちがい」が存在する。本年度は,それらの差異を包括する体育の実践研究を推進した。 中学校における脳性麻痺生徒を包括する実践研究においては,当初エクスクルージョンであった学校文化において「ダンピング」(共に学びながら「放置」),「インテグレーション」(場は共にしながら個別学習)という段階を進める中で「リバース・インテグレーション」(健常者が,アダプテッド・スポーツを学ぶ)を経験したところ,通常級生徒たちの関わり方の変化が見られた。また,上肢欠損の生徒を包括した体育実践においては,手や腕を使わない5up(ウォームup,モチベーションup,スキルup,コミュニケーションup,フィットネスupの全てを含む準備運動)で「自己ー他者ー運動との三位一体」のケアリング関係を構築すればインクルーシブの質が高まると考察された。 地方に少なくない複式学級における「アダプテーション・ゲーム」では,年齢差を包括するルールを創造する過程で思考力を発揮し,高学年や運動能力の高水準層に「ふきこぼれ」を生むことなく,全員に没頭夢中の学習空間となった。同様に,小学校6年生と1年生との異年齢インクルーシブにおいても,運動の特性から導き出された学習テーマを設定することで,高学年にも本気で運動自体の面白さに触れさせつつ,互恵的なケアリング関係を創出可能なことが明らかとなった。 いわゆる入国管理法の改正により,外国にルーツのある子どもは増加する傾向にある。多様さに言語の通じにくい子ども同士がノンバーバルコミュニケーションによる体育を通じて心を通わせられる可能性も示唆された。また,学校をあげて異文化を包括する行事や取組みを継続することで互いを受け容れ合う学校風土が醸成されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実践研究の水平的な拡がりとインクルーシブ体育における垂直的な質の深まりがみられたためである。 研究分担者および研究協力者の理解の深化と学校現場との繋がりがその要因だと考えられる。それら実践研究は『体育科教育』誌の連載として公表し続けており,読者によるさらなるインクルーシブ体育の実践が待たれるところである。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況に記載した実践研究とその公表を継続していく。 加えて,科学論文としてのインクルーシブ体育の意義及び,その学習評価についてまとめていく。
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Causes of Carryover |
今年度は質的な実践研究に注力し,定量的分析にかかる物品費,分析費用を次年度に持ち越したためである。
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Research Products
(11 results)