2018 Fiscal Year Research-status Report
体育授業におけるフロー体験につながる自律的な勤勉性の育成
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17K01634
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
村瀬 浩二 和歌山大学, 教育学部, 教授 (90586041)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安部 久貴 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (40634556)
梅澤 秋久 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (90551185)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非認知スキル / 勤勉性 / 統制感 / 戦術的意思決定能力 / 質的分析 / 同時効果モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は2017年度に収集したデータの分析とそこで生成された仮説を元にした授業実践を行った。データの分析は量的分析、質的分析の両面から行った。量的分析では、勤勉性と運動有能感の関係を明らかにすることを目的とし、同時効果モデルや遅れ交差モデルを用いた因果関係を検証した。その結果、「勤勉さ」の高さやその向上が「挑戦機会の発見」や「統制感」、「有能さの認知」を高めることが確認された。つまり没頭できる能力が、新たな挑戦機会を探すよう促し、技能を向上させることで有能感を高めることが示唆された。また、一方で「統制感」の向上が「勤勉さ」を高めることも示唆された。これは勤勉性が先行する要因ではあるものの、勤勉性と統制感の間に循環作用があることを示唆している。(2019ECCSで発表予定)。 この没頭できる能力を向上させる方法を検討するため、授業場面の質的分析を試みた。小学校4年生のゴール型ゲーム単元において対象児を含むチーム内での相互の働きかけや、教師による課題提示や相互作用を分析した。その結果、ゴール型ゲームの課題である「スペースへのパス、走り込み」を習得していく過程において、葛藤や揉め事が起き、その過程を経て技能の習得が見られた。さらに、その後、対象児から周囲に自分から働きかける場面が見られた。この他者への働きかけは勤勉性の一部であることから、量的分析における勤勉性と運動有能感の循環作用と捉えることができる(2018スポーツ教育学会で発表)。 このような課題を習得する過程は、教師によって生成される。特に、ボール運動であれば、パスやドリブルといった個人技能ではなく、戦術の理解、特にチーム戦術の理解が重要であろう。これらの理解を促すためには、教師の問題提起が重要であり、その適切さや適時性によって成果に影響を与えることが予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画は複数クラスにおける教師の発言を分類し、量的な比較を行う予定であった。しかし、2017年段階で学習者の勤勉性を検証するには、単元前後の測定では不十分なことが明らかとなっていた。そこで収集したデータから質的分析を試み、児童が課題に向かって没頭している場面を抽出する手法によって検証した。この没頭している場面と、それに関わる仲間や教師からの働きかけを質的に分析し、課題に向かっている場面、課題を達成しようとしている場面に没頭する姿があることが示唆された。しかし、このためには教師の課題提示の適切性・適時性が重要であった。これらの成果により、当初計画した研究目的については、一定の成果を得た。このような観察は、小学校ゴール型運動においてさらに2単元において収集済みである。
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Strategy for Future Research Activity |
質的分析で用いた観察記録は、小学校4年生の1単元分である。さらに、別の観察記録が小学校ゴール型運動の2単元において収集済みである。これらの観察記録から、前出のような葛藤や揉め事を通じた技能習得に至る学習過程が起きることを確認する。さらに、教師の発言の効果について、その適切性や適時性を検証する。 一方、授業実践において勤勉性への影響を検証するにあたり、単元内の各時間の没頭度を測定することが必要である。そこで毎時間児童・生徒が簡便に実施できる、4~6問程度で構成された質問紙が必要となる。これを作成することにより質的な検証だけでなく、勤勉性の量的な検証も可能となる。
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Causes of Carryover |
2018年度予定した成果発表のための旅費を使用できなかった分である。これは、2019年度において成果発表を行うため、旅費として確保した。
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Research Products
(6 results)