2018 Fiscal Year Research-status Report
1914年以前のイギリスにおける女性のホッケーの普及過程に関する研究
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17K01670
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
秋元 忍 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (50346847)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ホッケー / 女性スポーツ / イングランド |
Outline of Annual Research Achievements |
1895年、イングランドの女性のホッケーを統括する最初の組織として、レイディーズホッケーアソシエーション(以下LHA)が設立された。LHAの設立には、以降100年以上存続した、性による分離を伴うホッケーの国内統括の起点となった出来事として重要な意味を見出せるが、LHA設立を含む女性のホッケーの組織化の経緯には未解明な点も多く残されていた。よって本年度は、19世紀末のイングランドにおける女性のホッケーの組織化に関する研究の一環として、LHAの設立の経緯と、設立時のシーズンにおけるLHAの活動実態について、LHA内部文書(総会、委員会議事録、会計帳簿等)、ホッケー関連雑誌、ホッケー書等を主要史料として検討することを目的とした。これらの関連史料は、昨年度に引き続き実施したイギリス現地での史料調査によって入手したものである。本研究の成果の一部は、「19世紀末イングランドにおける女性のホッケーの組織化に関する研究 レイディーズホッケーアソシエーションの設立(1895年)と設立時のシーズンの活動の検討から」として、日本体育学会第69回大会において公表された。 本研究の結果、LHA設立の背景には、地域、学校のクラブにおけるゲームの活発化、アイルランドとの対戦、既存の男性の組織による女性のゲームの統括の拒否等の多様な経験の蓄積が挙げられること、LHAの規約、ルールの制定には男性の組織の規定が流用されたこと、LHAは大学教育を受けた女性のネットワークと密接な関わりがあったこと、そして2度の改名を経て、1997年まで存続した組織名であるオールイングランドウィミンズホッケーアソシエーションが1896/97年開始時に採用されたこと、等が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に続き、本年度も史料収集のためのイギリス研修旅行を実施した。大英図書館、バース大学図書館、ケンブリッジ大学図書館、ロイヤルホロウェイカレッジ図書館等にて、長期間の史料調査を実施した。結果、この2年間で、下記の女性のホッケー関連史料を大量に収集することができた。1)統括組織設立(1895年)以前にホッケーがプレイされていた女性カレッジ(ガートン、ロイヤルホロウェイ)の内部史料(ホッケークラブの会議録、メンバーリスト、校友会誌、学報等)、2)女性のホッケーの統括組織である、レイディーズホッケーアソシエーション、オールイングランドウィミンズホッケーアソシエーションの内部史料(会議録、加盟クラブリスト、会計帳簿等)、3)1895年以前の女性のホッケーの活動に言及した新聞、雑誌記事(The Queen、The Girls Own Paper等)。これらの関連史料は本科研費による助成を受けて初めて収集可能になったものであり、女性のホッケーの組織化の背景と実態の解明を促進するものであった。現在、これらの史料の読み込みを進めており、統括組織設立以前の女性カレッジにおけるホッケークラブの活動と、女性の統括組織の設立課程の2点について、投稿論文を準備中である。よって研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年(令和元年)度は、統括組織設立以降の女性のゲーム普及過程を解明することを目的とする。組織化以降、統括組織加盟クラブと非加盟クラブの活動は、いかなる対立関係の中で、それぞれいかなる規模と地理的拡大を伴って展開を見たのかを、7月末に2週間の予定で実施するイギリス研修旅行において収集した史料に基づき明らかにする。主として、女性のホッケー専門雑誌(The Hockey Field)、地域の女性ホッケークラブの内部史料等の調査、収集、分析を進めたい。 そして3年間の研究成果を、近代スポーツの普及に関する従来の学説の中に位置づけ評価することによって、総括を行う。これらの成果を学会発表し、学術雑誌へ投稿する。
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Causes of Carryover |
昨年度等同様に、大英図書館における史料調査の際、高額になる文献複写依頼を控え、許可されている文献については自分のデジタルカメラによる撮影にて代替し、可能な限り物品費を抑制した。本差額は、平成31年(令和元年)度の調査における、統括組織設立以降の女性のホッケーの普及に関連する一次史料の調査に充当する。
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Research Products
(1 results)