2017 Fiscal Year Research-status Report
ハイブリッド型事業経営体によるスポーツ地域戦略に関する研究
Project/Area Number |
17K01695
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
原田 宗彦 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (70189710)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ハイブリッド事業体 / スポーツマネジメント / スポーツコミッション / スポーツツーリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、スポーツイベントの誘致開催や、指定管理者の受託等で事業収入を稼ぐ一方、その果実を地域スポーツ振興に振り向ける、経済的に自立したハイブリッド事業体のモデル構築にあり、平成29年度は、公有施設コンバージョンによるハイブリッド事業体の構築に成功した株式会社銚子スポーツタウンを調査対象とした。同社は、廃校になった旧市立銚子西高校をスポーツ合宿施設にコンバージョンし、その運営を行う第三セクターである。銚子市が資本金(500万円)の半分を出資し、残りはNPO法人銚子スポーツコミュニティが出資する官民共同事業体であり、自治体、銀行、信用組合、NPO、スポーツ団体といった多様なステークホルダーから有形無形の支援を受ける仕組みである。コンバージョンされた旧市立高校は、野球場、グランド、合宿所、食堂を備え、2018年4月には、最大152名のアスリートを収容することができる総合施設に生まれ変わった。本ケースは、廃校を活用したいわば「公廃民営」と言うべき社会的意義のある事業であり、NPO法人銚子スポーツコミュニティが、銚子市と第三セクターを設立して、リスクを取って経営に乗り出した稀有な事例である。千葉県内の近隣自治体で、すでに民間事業者による類似のスポーツ合宿事業が成功している例もあり、適切なマーケティングを行うことによって、十分に採算が見込める官民連携ビジネスに育つことが期待される。ちなみに、現在再活用されている廃校の約 8 割(3,299校)の用途は、大学を除く学校が1,609校、社会体育施設が1,015校、社会教育施設・文化施設が675 校のように、教育系施設としての利用が多いが、再活用されている廃校の多くが地域のスポーツ施設として有効利用されていることは注目に値する。今後、銚子市の事例は、他自治体が抱える廃校問題に対し、ひとつのソリューションを提供するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、地域において自立した事業体として、独自のスポーツエコシステムを築いているスポーツクラブやスポーツコミッションを対象として、ヒアリング調査を実施した。対象は、「NPO法人掛川体育協会」「NPO法人出雲スポーツ振興21」「NPO法人軽井沢SC」である。さらに公有施設のコンバージョンに関しては、NPO法人から株式会社に衣替えし、銀行から融資を引き出して施設改装を行った銚子スポーツタウンでヒアリング調査を実施した。これらの事業体に共通しているのは、明確な組織目標とPDCAサイクルを回すことができる経営力を備えた人材の有無、そして地域にとって良いことを行っている明確なミッションの存在であり、スポーツで稼ぐ仕組みが確立している点にある。初年度は、一連のヒアリング調査より、新しいスポーツ地域マネジメントの萌芽を確認することができた。今後は、さらに多くの事例から共通の経営法則を導くために、帰納的アプローチを用いた研究を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、調査3として、スポーツ庁が発表した既存の地域スポーツコミッション(n=80)に関する質問紙調査を実施する。質問内容は、①スポーツコミッションの設立経緯と創成過程(首長の影響、部局改変の影響、町内横断的な政策形成、先行事例の情報入手等)、②組織形態、③事業内容、④成果(経済的効果、社会的効果、環境的効果)であり、これによって、現在のスポーツコミッションの事業内容を把握するとともに、インナーの政策を包含するハイブリッド事業体への移行可能性を検証する。さらに調査4として、すでに設立された「さいたまスポーツコミッション」「佐賀県スポーツコミッション」「札幌市グローバルスポーツコミッション」を対象に、収入源とビジネス展開例に関するインタビュー調査を実施する。インタビュー調査では、対象者の発言データの概念化を行う。具体的には、選ばれた自治体を対象に,インタビュー調査対象者の発言データを内容のまとまりごとに集め、分析ワークシートを作成する。質問項目は、①スポーツツーリストの誘客(スポーツイベント開催、合宿誘致、大会の誘致等)、②事業体の安定経営を担保するツーリストからの収入(合宿、キャンプ付帯サービス収入、イベント事業収入、合宿所・公共施設・廃校などの利用権を賃貸等で取得し活用する宿泊施設収入、物販収入)、③地域外の企業・団体(地域外)からの収入(ネーミングライツ、協賛金等)である。
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Causes of Carryover |
調査計画の中で、関西スポーツコミッションへのヒアリング調査と、大阪城パークマネジメントオーガニゼーション(PMO)の視察を予定していたが、日程の調整がつかず、キャンセルとなった。このヒアリングと視察は、次年度の計画に持ち越すこととした。
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Research Products
(3 results)