2018 Fiscal Year Research-status Report
東京オリンピックが生み出す遺産に関する社会学的研究
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17K01721
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
石坂 友司 奈良女子大学, 生活環境科学系, 准教授 (10375462)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松林 秀樹 平成国際大学, スポーツ健康学部, 准教授 (20453417)
高木 啓 千葉大学, 教育学部, 准教授 (90379868)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 東京オリンピック / 長野オリンピック / レガシー / スポーツ・メガイベント / スポーツ社会学 / 都市社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はオリンピックの遺産(レガシー)がどのように生み出されていくのか、大会後を見据えた観点から、開催計画の検証と地域ではじまる諸実践の現地調査(質的調査)、社会調査(量的調査)を通じて社会学的に明らかにするものである。オリンピックの遺産とは、開催の過程、開催後の足取りを経て地域に生み出されていくものである。開催計画が描いた青写真がどれだけ実現されたのかを大会後に検証するために、本研究は東京大会の準備段階に焦点を当てた研究を行う。 その際、経済的・物理的インパクトにとどまらず、地域住民が直面する社会・文化的影響に焦点をあてるため、先行事例である長野オリンピックの調査研究から調査者らが導いた、オリンピック遺産に関する7つの「評価枠組み」によって分析する。昨年度におけるそれら評価枠組みの検討の過程で、冬季/夏季大会の相違が明確に意識されるに至り、1964年に開催された東京オリンピックの検証が重要であることが再確認された。そこで、関連する研究者との共同研究を実施し、1964年大会の遺産について検証する編著書の刊行を行った。具体的には、オリンピックが関係するスポーツと都市という二つの軸から検証を行った。 また、20年大会は一時の混乱状況は脱したものの、開催費用の高騰やさまざまな領域で課題が散見される。メディアなどを通じた積極的な情報発信を行うとともに、関連する自治体への聞き取り調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
調査者が作成した長野オリンピックを検証する「評価枠組み」を東京大会に適用するに当たって、前述のように64年大会との比較検証の重要性が昨年度から浮上してきている。現代から64年大会を振り返るときに、オリンピックの成功がどのような要因から評価されているのか、過去に都民に対して行われた世論調査などのデータを元に、検証する作業を追加した。スポーツ社会学、都市社会学、及び歴史学を専門とする研究者の参集を得て、共編著を刊行した。ここで導き出された結論の一つは、オリンピックの準備期において、いかに混乱の渦中にあったとしても、大会運営上の成功をもって、人々は大会を成功と評価しがちであるということである。そのことは、大会開催後数十年に及ぶ遺産をどのように評価し、検証していくのかという視点を明確化していく必要性を改めて提起するものとなった。 また、2018年2月に平昌冬季オリンピックが開催された影響で、韓国側から長野オリンピックの事例を通した評価枠組みの提示が要請された。2017人文韓国プラス支援事業の助成を受けた翰林大学校日本学研究所の招請を受け、韓国江陵市で行われたポストオリンピックフォーラム、並びにワークショップに参加し、報告を行った。またその成果を論文としてまとめた。 昨年度実施予定だった、臨海部に位置する行政区への予備調査を実施し、オリンピック開催をめぐってどのような取り組みを行っているのか、予備的知識を得た。当初2018年度に予定していた量的調査は、共編著の刊行やオリンピックフォーラムへの参加があり実施できなかったため、2019年度早々に実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
前述したように、64年大会の検証をあらたな課題として加え、20年大会にむけた「評価枠組み」の再構築を行ったため、量的調査の実施に若干の遅れが出ている。64年大会の検証と、それがどのような観点で20年大会に継続されているのかについては、関連する編著書の刊行を行った。そのため、長野大会との冬季/夏季大会の比較から検証を行う予定であった、大会後を見据えたオリンピック遺産の研究に厚みが増したと考えている。 2019年度は昨年実施した予備調査の状況を踏まえ、現地調査及び量的調査の対象地域を特定し、量的調査(サンプル数2,500件)を実施する。また、その結果を社会学的に分析する予定である。加えて、日本スポーツ社会学会の企画委員会とも連動し、オリンピックの遺産に関する編著書の刊行を行う予定である。
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Causes of Carryover |
関連する課題の浮上によって、今年度実施予定だった量的調査が実施できなかったため、2019年度に関連予算を繰り越した。2019年度は湾岸地区を対象として、サンプル数2,500の量的調査を実施する。4割程度の回収率を確保するため、依頼時に返信用封筒を同封し、簡易報告書の郵送を行う。予算は調査票の郵送費、簡易報告書の印刷・郵送費、作業補助者への謝金等に用いる。また、湾岸地区を対象にした現地での聞き取り調査や、オリ・パラ教育を実施している学校等への調査を行う予定で、その調査費としても充当する予定である。
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