2018 Fiscal Year Research-status Report
被災地における教師の学校ストレスと心身の健康に関する実証的研究
Project/Area Number |
17K01778
|
Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
山本 奬 岩手大学, 教育学研究科, 教授 (90552612)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | ストレス / ストレッサー / 対処行動 / 認知的評価 / 納得 / 教師 |
Outline of Annual Research Achievements |
東日本大震災により心的影響を受けた子どものサポートは、教師の心的健康に支えられているが、実際にはストレス反応を呈し適切な支援ができない教師がしばしば見られる。教師にストレスマネジメント能力を習得させることは、被災地を含め学校を機能させるための大きな課題となっている。そこで本研究では、教師の学校ストレスに関する諸相を明らかにし、ここで得られた知見を用いた教師のメンタルヘルス研修会を開催し、その効果を検証することである。 (1)教師が経験する学校ストレッサー:教師の経験する学校ストレッサーについて、その一般性と被災地の特殊性をともに考慮しながら、その構造と状態を明らかにした。前年度研究で作成した暫定尺度を用いて、200人を対象に調査を行い因子分析により先行研究とは異なるストレッサーの構造を探索しこれを尺度化した。 (2)教師の対処行動:次に教師の選択し得る対処行動をLazarus & Folkman(1984)と認知行動療法の知見を基に、その構造と諸相を明らかにした。前年度研究で作成した暫定尺度を用いて調査を行い、探索的因子分析を基に測定尺度を作成した。そこでは従前の研究成果とは異なる、やや情報が圧縮され単純化された観点が示された。 (3)ストレス反応の決定要因:教師が経験する学校ストレッサー及び対処行動並びにストレス反応の関係を明らかにすることでストレス反応低減に有効な要因を探索した。これについて次年度実施する教師対象の研修会の質の向上を図るため、当初計画よりも面接や記録を基にした質的研究を充実させた。 (4)教師対象メンタルヘルス研修会(啓発活動)の試行:啓発活動は当初は次年度実施の予定であったが、次年度成果を確実なものにするために、これを試行した。そこでは、研修会の改善に資する情報を収集することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ここまでに予定していた「教師が経験する学校ストレッサー」「教師の対処行動」の構造の追究と測定尺度の作成等については概ね完了し、妥当性の検討を残すのみとなった。「ストレス反応の決定要因」について、量的な追究については完了した。これについて次年度本格的に実施する啓発活動で利用する教材の質を向上させるため質的検討を行った。これらにより、次年度実施する教師への啓発(教員対象メンタルヘルス研修会)を実施するための材料を調えることはできた。 これに加えて、当初は次年度実施を予定した啓発活動について、前倒しをして現年度中にこれを試行することができ、改善の要点を整理することができた。 これらにより、次年度研究を完成させるための見通しを得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
○教師への啓発の実施:2年間で得られた知見を基に、小中高等学校教師を対象とするストレスマネジメントに関するリーフレットを作成し、これを活用した研修会を実施する。その上で啓発の効果を明らかにする。 (1)リーフレットの作成:啓発活動で用いるリーフレットを作成する。これまでの研究で、ワークシート形式が有効であることが示唆されたことから、これを採用する予定である。 (2)研修会の実施:上記リーフレットを活用した教師のメンタルヘルスをテーマとする研修会を、夏休み期間に被災地を含む3会場で開催する。変容を目指す部面は、2年間の研究成果を活かし、取り得る対処行動を豊富にすることや認知の意図的変容とする予定である。 (3)成果の検証:教師への啓発活動について、3つの側面から検証する。1点目は研修会が対処行動を拡大させることができたかなど、研修会の学びの部分の成果に関するものである。2点目はその変容がストレス反応の低減をもたらしたかという実践的な成果に関するものである。3点目はこれらの成果にリーフレットが有益にはたらいたかに関するものである。これらについて被災地の特殊性や経験しているストレッサーやその認知を考慮しながら検証する。
|
Causes of Carryover |
人件費・謝金を資料整理のために予定していたが、得られたデータが想定したものよりも複雑であったため、これを研究者自ら行ったために、2万余円の残額が生じた。その一方で次年度は、教員対象メンタルヘルス研修会の成果の検証に想定よりも経費を要することが見込まれるため、残額をこれに充当する予定である。その他については、当初の予定通り研究を推進し経費を適切に執行する予定である。
|