2018 Fiscal Year Research-status Report
食生活の偏りが脂肪組織による感染免疫応答に及ぼす影響と腸内細菌叢の関わりについて
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17K01850
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
有持 秀喜 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (30311822)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 高脂肪食 / 腹腔内感染 / 抗菌ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
食生活の偏りと生活習慣の変化が肥満の原因となっている。肥満は免疫系に変化を起こし、感染症を誘発しやすくすると考えられている一方、白色脂肪細胞は抗菌物質を産生することで感染防御能を発揮するという報告もある。そこで、マウス腹腔内感染モデルにおける菌の排除、および内臓脂肪組織による抗菌物質産生に対して高脂肪食の投与がどのような影響を与えるのかを検討した。普通食投与マウスおよび高脂肪食を4か月間与えて体重が普通食投与マウスの約1.5倍に増加した肥満マウスに大腸菌1.3 x 10^7 CFUを腹腔内投与し、2日後に腹腔内の菌数を測定したところ、高脂肪食投与マウスからは7.0 x 10^3 CFU、普通食投与マウスからは7.3 x 10^2 CFUの菌が検出され、高脂肪食投与マウスの方が9.6倍高いことが分かった。これらのマウスの内臓脂肪組織中の抗菌ペプチドCathelicidin antimicrobial peptide(CAMP)遺伝子発現を調べたところ、普通食投与マウスの方が10倍以上高かった。腹腔内で抗炎症性に働くと考えられている大網についても検討したところ、CAMP遺伝子の発現は普通食投与マウスの方が約2.5倍高いことがわかった。さらに脂肪細胞の成熟異常が報告されているLMP7KOマウスを用いたところ、普通食投与の場合、KOマウスではコントロールマウスに比べて腹腔内の残存菌数が33.9倍多く、内臓脂肪および大網中のCAMP遺伝子発現もKOマウスで半分程度に減少していた。高脂肪食を与えた場合、KOマウスではコントロールマウスに比べて菌数が18.9倍多かったが、脂肪組織のCAMP遺伝子発現はKOマウスで増加する傾向を示した。これらの結果は高脂肪食投与による内臓脂肪由来抗菌ペプチドの産生低下が、菌の排除に悪影響を及ぼしている可能性を示唆するものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
食生活の偏りや腸内菌叢の変化が脂肪組織による感染免疫応答能に与える影響を明らかにすることを目的としており、2018年度の研究により肥満マウスでは内臓脂肪組織による抗菌ペプチドの産生低下が起こり、これが菌排除悪化の一因になっている可能性があることを示す結果を得られたため、おおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに行った高脂肪食投与が皮下および腹腔内感染に対する脂肪組織の感染防御能に及ぼす影響を明らかにする研究に関して、他のグラム陽性・陰性菌を接種するなどして発展させるとともにCD98などの免疫関連分子を欠損したマウスについても検討を行い、高脂肪食投与による脂肪組織の免疫応答能や腸内菌層の変化とこれらの分子との関連性、機構を明らかにする。また、糖分の多い食餌やコレステロール血症を引き起こす食餌が脂肪組織の感染防御能に及ぼす影響についてもマウスモデルを用いて検討する。
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