2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of exercise therapy for obesity and malnutrition on the basis of the neural regulatory mechanism of appetitive motives
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17K01860
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
吉川 貴仁 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (10381998)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 食習慣 / 食の意欲 / 食の認知的抑制 / 無意識 / 脳磁図 / 島皮質 / 下前頭回 / 交感神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、食意欲の促進・抑制に働く脳内ネットワークの評価系(脳磁図法)を用いて、現代人の肥満や低栄養の背景となっている食意欲の促進・抑制の破綻機序を解明し、その修復法として運動療法をリンクさせた新規の脳科学的生活指導法の立案を目指す。 平成29年度は、上述の破綻機序を解明する上で、本人の自覚とは関係なく(潜在的で無意識に)作用する脳内ネットワークの重要性に着目し、日頃意識している食べる意欲や抑制(我慢)といったものが、(意識に上らないような)食品の視覚的刺激によって誘発される無意識の脳神経活動の強さに左右される可能性を検討した。若年成人男性(20名)を対象に、12時間空腹条件で、本人の自覚に上らない形で色々な食品写真の視覚刺激を10分間与える無意識課題を行った。また、Three-Factor Eating Questionnaire-R21(TFEQ-R21)で各人の食行動の特性を調査した。その結果、心拍変動解析により評価した交感神経活動(低周波成分パワー/高周波成分パワー比、LF/HF比)が食品写真刺激前後で増加し、LF/HF比の増加とTFEQ-R21で調べた日常の食における認知的自制(我慢)の程度の間に負の相関を認めた。また、食品写真の視覚刺激後750~900ミリ秒の時間帯で、ブロードマン脳領域(BA)47(下前頭回)におけるα帯域(8-13 Hz)のパワー値の増加とLF/HF比の増加との間に負の相関を認め、BA 13(島皮質)のα帯域パワー値の増加と日常の食に関する認知的自制(我慢)のスコアとの間には正の相関を認めた。これらの結果から、食に対する認知的・自覚的な抑制(我慢)には、自律神経系を含め無意識で作用する脳内ネットワークが関わることがわかり、現代人の肥満や低栄養の背景となっている食意欲の促進・抑制の破綻機序を考える上でも、同様の視点が必要である可能性を示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究では、食意欲の促進・抑制の破綻機序を解明する上で、本人の自覚とは関係なく(潜在的で無意識に)作用する脳内ネットワークの重要性が明らかになった(Takada K, et al. Neural activity induced by visual food stimuli presented out of awareness: a preliminary magnetoencephalography study. Sci. Rep. 2018; 8: 3119.)。また、従来、我々の開発した食意欲の促進・抑制に働く脳内ネットワークの時空間的バランスを踏まえた脳科学的評価系(脳磁図法)を無意識の視覚刺激条件でも活用できるようになったことを意味する。今後、これらの評価系を利用することで、食意欲の促進・抑制の破綻の修復法としての運動療法の評価に役立つものと思われる。よって、本研究は全体として順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度以降の実験では、現代人における食意欲の促進・抑制の破綻を修復させる手段として運動療法が果たす役割について調べる。実際に単回運動を含む種々の負荷試験を行い、ストレスや疲労に伴って、食の意欲やその基盤になる脳内ネットワークが受ける影響について調べる予定である。また、継続的な運動習慣と食意欲の関係を調べるために、国際標準化身体活動質問紙(International Physical Activity Questionnaire; IPAQ)などを用いて種々の年代における運動習慣を調べ、これらと食の意欲およびその基盤になる脳内ネットワークの関係性についても調べる予定である。当初予定のあった若年女性を対象としたこれらの検討についてはすでに予備的検討を進めている。高齢者や肥満者についても続いて調べる予定である。 なお、これらの研究計画は、大阪市立大学大学院医学研究科倫理委員会からはすでに承認を受けている。
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Causes of Carryover |
平成29年度に、無意識の視覚刺激条件での脳磁図実験の確立を優先して行い、一般若年成人男性を対象にその基礎的実験に時間を要したため、未使用額が生じた。
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Research Products
(2 results)