2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of exercise therapy for obesity and malnutrition on the basis of the neural regulatory mechanism of appetitive motives
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17K01860
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
吉川 貴仁 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (10381998)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 食習慣 / 日本食 / 食意欲 / 促進・抑制バランス / 無意識 / 情動性摂食 / 脳磁図 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、脳磁図法を用いて食意欲の促進・抑制バランスの破綻機序を解明し、その修復法として新規の脳科学的生活指導法の立案を目指す。 令和3年度は、前年度に引き続き、食習慣形成の基礎となる意識に上る(つまり、意識的に行動を選択する)情報処理過程と意識に上らない(つまり、食の外部刺激に対して無意識に何気なく行動を起こしてしまう)情報処理過程の双方に焦点を当てて、これら両方の脳神経活動が食意欲の促進・抑制バランスに与える影響について検討を行い、得られた結果を論文として海外誌に投稿してきた。この令和3年度に行ってきた投稿過程において、海外の査読者から実験に使用された食品の特性が良く分からないという指摘を受けている。本研究ではこれまでに研究代表者が食欲の研究で使用してきた食品画像を引き続き使用したが、その中には蕎麦やたこ焼きといった我が国独特の食品が含まれている。これらは日本での食生活になじんだ実験参加者を対象に研究を進める上では意味のある事である。よって、今後、日本食をも含めた、エネルギー量、栄養素などを明確化した研究用の食品画像セットを構築する必要性を改めて認識し、新規食品画像セットの確立に向けた準備を開始した。また、令和3年度に行ってきたデータ解析の過程で、以下のような新たな知見の可能性を見出した。本研究では参加者に提示する食品画像が意識に上らないようにするためにバックワードマスキングという手法を利用したが、参加者によっては一部の画像が意識に上ってしまう場合があった。そこで、全画像が意識に上らなかった参加者と画像の一部が意識に上った参加者との間の違いを検討したところ、画像の一部が意識に上った参加者では食行動特性に関わる指標の1つである情動性摂食の度合いが高い可能性が示され、食行動に関わる個人の特性が視覚的食刺激への気付きに影響を及ぼしているという興味深い仮説を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和3年度に行った検討結果から、1)日本食をも含めた、エネルギー量、栄養素などを明確化した研究用の食品画像セットを構築すること、2)バックワードマスキング法で食品の全画像が意識に上らなかった参加者と画像の一部が意識に上った参加者との間の差異を検討するため、n数を増やすための追加実験を行うことが今後必要であると考えられた。そこで、追加実験を計画しているが、新型コロナウイルス感染症の流行のため、大学病院内の検査設備(脳磁図室)の感染防止対策の徹底や、病院内への立ち入りに制限があるため、実験の実施に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度までの研究で注目してきた、個人の食欲・食行動における意識に上る(意識的に行動を選択する)情報処理過程と、意識に上らない(食の外部刺激に対して無意識に何気なく行動を起こしてしまう)情報処理過程の相互関係は、日常生活の中での食意欲の促進・抑制バランスを左右する大きな要因と考えられる。よって、その神経メカニズムの解明を行うという本研究の方向性は、意識的矯正を主体とする従来型の食事・生活指導法を改良し好ましい生活習慣を定着させる方法を考案するという、本研究の目標においては外せない。 今後、令和3年度に見出した課題である、1)日本食をも含めた、エネルギー量、栄養素などを明確化した研究用の食品画像セットを構築すること、2)バックワードマスキング法で食品の全画像が意識に上らなかった参加者と画像の一部が意識に上った参加者との間の差異を検討するため、n数を増やすための追加実験を行うことを計画している。しかし、脳磁図を用いた実験の実施が引き続き困難である場合を考えて、1)に関しては、脳磁図実験に用いる前の準備段階としての日本人対象の研究に適した食品画像セットの構築に注力したい。また、2)に関しても、(当面は脳磁図を測定せず)バックワードマスキング法を用いた食品画像提示のみの実験と(情動性摂食を捉える)食行動特性の質問紙を組み合わせた実験を計画する。
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Causes of Carryover |
令和3年度は、前年度に引き続き、食習慣形成の基礎となる個人の食欲・食行動における意識に上る情報処理過程と意識に上らない情報処理過程の双方に焦点を当て、それらの脳神経活動の関係性について、論文の投稿を行いつつ追加の実験を計画してきた。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響でヒトを対象とした脳磁図実験の実施が遅れることになり、その実験や解析、論文作成に時間を要したため、未使用額が生じた。次年度には現在投稿中の論文発表を目指すとともに、日本人対象の研究に適した食品画像セットの構築など、これまでの知見から得られた新しい課題に取り組み、本研究の最終目標である、食意欲の促進・抑制バランスの破綻修復に必要な生活指導法の立案を目指す予定である。
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Research Products
(3 results)