2018 Fiscal Year Research-status Report
植物精油の吸入投与がアルツハイマー型認知症に及ぼす影響
Project/Area Number |
17K01871
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
佐藤 忠章 国際医療福祉大学, 薬学部, 准教授 (80287549)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 植物精油 / アロマセラピー / 吸入投与 / アルツハイマー型認知症 / マウス / 脳内移行 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、アルツハイマー型認知症の治療法に関して様々な分野から研究が進められているが、まだ有効な治療法は確立されていない。今回の私の申請では、日常生活の多くの場面で用いられている植物精油の吸入投与(アロマセラピー)がアルツハイマー型認知症に及ぼす影響について、モデルマウスを用いて科学的に解明することを目的とする。これにより、アルツハイマー型認知症の治療や予防に対して、植物精油の有効性が明らかになると考える。 まず、ローズマリー精油を研究の対象に選抜した。ローズマリー精油は、経験的に中枢神経系を活性化することで認知機能を改善するとされている。しかし、ローズマリー精油の効果の科学的根拠は報告されていない。そこで、アルツハイマー型認知症モデルマウスを用いて、ローズマリー精油の効果を検討した。 実験方法としては以下の通りである。マウスにローズマリー精油を吸入投与させ、次いでスコポラミンを腹腔内投与することでアルツハイマー型認知症モデルマウスを作成し、最後に認知機能を評価するために短期記憶の評価において用いられるY字迷路試験を用いて検討した。その結果、ローズマリー精油を吸入投与した当モデルマウスにおいて、自発的な交替行動率の有意な改善効果が認められた。さらに、ローズマリー精油の主要成分である1,8-シネオール、α-ピネン、β-ピネンが、吸入投与後に濃度依存的に脳内から検出された。したがって、ローズマリー精油は、吸入投与によってアルツハイマー型認知症モデルマウスに対して認知機能を改善すると考えられる。α-ピネン、1,8-シネオールなどは、脳内に移行することで直接的に影響を及ぼしていると考えられる。今後、臨床応用へ向けてローズマリー精油の詳細な研究が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在、認知機能改善作用を有するローズマリー精油以上の効果を有する植物精油や成分を探索している。しかし、有効な植物精油や成分を発見できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
アルツハイマー型認知症の発症メカニズムとしては、アミロイドβやタウたんぱく質の関与が考えられるが明確な機序の解明には至っていない。そこで、脳内のモノアミン神経系を賦活させる作用を有すると報告されている植物精油(ラベンダー精油、ローズマリー精油、ペパーミント精油など)を選抜し、それらの精油を組み合わせることにより効果の期待できる植物精油を見出すことを目的とする。さらに、関連するモノアミン神経系を特定することで作用機序の解明にもつながると考える。
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Causes of Carryover |
マウスの状態を把握するために心電図測定を取り入れる予定であったが、実験の進捗状況が合わず実施することができなかった。 次年度、心電図だけではなく、血圧や心拍数なども取り入れて、植物精油がアルツハイマー型認知症モデルマウスに対する影響との関係を明らかにする予定である。
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Research Products
(1 results)