2018 Fiscal Year Research-status Report
睡眠と糖化ストレス:メラトニンと蛋白糖化最終産物(AGEs)の関連を探る
Project/Area Number |
17K01880
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
米井 嘉一 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (40191655)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | メラトニン / 糖化ストレス / 食後高血糖 / 睡眠の質 |
Outline of Annual Research Achievements |
基礎実験ではメラトニンの糖化最終生成物(AGEs)分解促進作用について検証した。反応基質1-phenyl-1, 2-propanegione (PPD)のαジケトン構造の分解をメラ トニンが促進することが示され、AGEs架橋切断作用は陽性対照N-phenacyl-thiazolium bromide(PTB)や比較対照ロズマリン酸に匹敵した。メラトニンのAGE-コ ラーゲン架橋分解活性測定は明らかでなかった。酸化蛋白分解酵素(OPH)活性増強作用はOPH製造中止に伴い検証できなかった。 【基礎実験】 これまでメラトニンによる糖化最終生成物(AGEs)分解促進作用を確認、次にAGEsを分解する酸化蛋白分解酵素(OPH)の活性に及ぼす効果を確認する予定であった。OPHがH29年製造中止なったことを受け、H30年度は豚肝臓からOPHの抽出・精製を行い、最終的にOPHの純度(99%以上)ならびに酵素活性が確認できた。 【臨床試験】 外因性メラトニン摂取や睡眠不足の是正により食後高血糖(血糖スパイク)が緩和されるなど糖代謝が改善することについて論文報告を行った(Ogura M et al. 2018, Yonei Y et al. 2018)。「睡眠の質を高めることによってメラトニン分泌が増加し糖代謝が改善する」という仮説を検証するために、これまで2回の臨床研究を施行したが、いずれもメラトニン分泌動態の変化を検知することができなかった。そこでH30年度の臨床試験では、これまでの問題を解決するためにメラトニン分泌指標として蓄尿中メラトニンおよびその代謝産物(6-sulfatoxymelatonin, 6-hydroxymelatonin, N-acetylserotonin, serotonin)を測定し、寝室の照度管理を厳格に行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「睡眠の質を高めることによってメラトニン分泌が増加し糖代謝が改善する」という仮説を検証するために、これまで2回の臨床研究を施行したが、いずれもメラトニン分泌動態の変化を検知することができなかった。その理由として①メラトニン分泌指標が確立されていなかったこと、②メラトニン分泌評価に必要な睡眠環境として寝室の照度管理が不十分だったことが挙げられた。H30年度の臨床試験では、これまでの問題を解決するために①メラトニン分泌指標として蓄尿中メラトニンおよびその代謝産物(6-sulfatoxymelatonin, 6-hydroxymelatonin, N-acetylserotonin, serotonin)を測定し、②寝室の照度管理を厳格に行った。睡眠に不満を有する男女12例(51.9±7.2 歳)を対象に、持続血糖測定器(Free Style リブレ)を装着、試験品(AiR SX:西川産業)および対照品寝具を2週間ずつ交互に使用するクロスオーバー比較試験を行った。その結果、睡眠の質が高まる寝具を用いた時には蓄尿中メラトニン(p < 0.05)と6-hydroxymelatonin(p < 0.1)が高く保たれ、睡眠中の低血糖の頻度が減り、血糖変動の恒常性が保たれる傾向を認めた。 京都市有隣地区で日常的に歩行運動を行っている男女23名(78.7±6.1歳)を対象とした研究では、身体活動量(3次元加速度センサにて測定)が多いほど血清コルチゾルが低く、IGF-Iは高く、尿中6-sulfatoxymelatonin生成量は多い傾向がみられた。糖化ストレス指標の皮膚AGEs蛍光(AGE Readerにて測定)はピッツバーグ睡眠質問票「睡眠困難」スコアとの間に弱い正相関傾向がみられ、睡眠の質が低下するほど皮膚AGEs蛍光が強まることが示された。
|
Strategy for Future Research Activity |
【基礎研究】 H31年度はメラトニンがOPH活性に及ぼす影響を検証する。AGEsは細胞内小器官であるプロテアーゼにより分解されることから、メラトニンがプロテアーゼ機能に及ぼす影響を検証する。 【臨床研究】 H31年度は最終年度として、これまでの研究成果をもとに我々の仮説「睡眠の質を高めることによってメラトニン分泌が増加し糖代謝が改善する」がどの程度検証されたかを評価し、総括的論文として報告する。 睡眠の質、メラトニン分泌、糖化ストレスがどのように身体に影響を及ぼすかについては今後も研究を続ける。京都市有隣地区の自立高齢者の方々の中では、近年、認知機能の低下に悩む方が増えてきた。今後の方策として睡眠の質、メラトニン分泌、糖化ストレスが認知機能の指標(ウイスコンシンカードソーティングテスト・血漿βアミロイド)へ及ぼす影響を探る方向で研究を進めたい。
|
Causes of Carryover |
次年度にヒト試験における検査項目(アミロイドβ1-40及び1-42)を測定し、メラトニン、糖化ストレス指標との相関を検証することにしたため。
|
Research Products
(5 results)