2017 Fiscal Year Research-status Report
脳梗塞誘発性糖代謝異常に対する中枢-末梢臓器間連関機構の関与とその関連因子の同定
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17K01882
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
原田 慎一 神戸学院大学, 薬学部, 助教 (60633443)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳山 尚吾 神戸学院大学, 薬学部, 教授 (70225358)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 脳梗塞 / 糖代謝異常 / 肝臓 / SGLT |
Outline of Annual Research Achievements |
脳虚血ストレス誘導性の耐糖能異常は神経障害の発現を悪化させることを明らかとしてきた。さらに、この耐糖能異常の発現には、脳虚血ストレス負荷後の肝臓におけるインスリン感受性の低下が関与していることを見出してきた。その制御因子の一つとして、視床下部から産生される神経ペプチドであり、中枢-末梢臓器間連関の実行因子として報告されている orexin-A の関与について検討してきた。一方、交感神経系の活性化は、肝臓におけるインスリン抵抗性発現の起因物質の一つである炎症性サイトカインの産生を促すことが報告されている。さらに脳梗塞後の肝臓において、炎症性サイトカインの発現が増加するという報告もなされている。本研究では、まず交感神経系の活性化が炎症性サイトカインの産生に関与する機序を直接的に明らかにすることを目的に、肝臓のex vivo実験系を用いて検討した。5-6週齢のddY系雄性マウスから摘出した肝臓に、交感神経系の活性化を模倣するためにノルアドレナリン(1000μM)を添加し、1時間(37℃)培養した。対照群に比較して、ノルアドレナリン処置によって、炎症性サイトカインの一つであるtumor necrosis factor-α の発現が上昇した。その上昇は、α1受容体アンタゴニストのプラゾシンまたは迷走神経の活性化を模倣することに目的に処置したニコチンによって抑制される傾向を示した。以上のことから、交感神経系の活性化は、直接肝臓に作用することによって、肝臓における炎症性サイトカインの発現を調節している可能性が示唆された。今後はさらに関連する因子や受容体を薬理学的手法を用いて同定していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遺伝子改変動物の作製が予定通りできていないため、さらにex vivo 実験系の確立に時間を要しているため。今後よりより実験系を早急に確立し、課題遂行に努めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
1. ex vivo モデルを用いた脳虚血後の糖代謝異常に対する自律神経系を影響 脳虚血ストレスモデル動物を作成し、そのモデルから糖代謝に関与する臓器である肝臓、脂肪細胞および膵臓を摘出し、ex vivo 条件下にて培養後、ノルアドレナリンやアセチルコリンなど、自律神経系の神経伝達物質やinsulin、glucagon、抗糖尿病薬の一つであるメトホルミンなどを臓器特異的に作用させることによる各臓器の糖代謝機能への影響を、生化学的に解析する。
2. 脳虚血誘導性脳内SGLT-1の発現変化に対する関連因子の同定 SGLT siRNA の脳室内投与によって、SGLT ノックダウンモデルを作成し、そのモデルから摘出した大脳皮質を DNA マイクロアレイ解析することによって、ノックダウンによって変動するSGLT 関連因子の網羅的解析を行う。また、SGLT-1の発現調節に関与する可能性のある因子(Hypoxia-inducible factor-1α)について、その発現変化や直接的な関与について、薬理学的および生化学的に評価する。
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