2019 Fiscal Year Research-status Report
fNIRS脳機能計測に基づく虐待判定のための新たな客観的指標の創生
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17K01915
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
水島 栄 獨協医科大学, 医学部, 研究員 (00790940)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
檀 一平太 中央大学, 理工学部, 教授 (20399380)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | マルトリートメント / 児童虐待 / ADHD / fNIRS / Cortisol / Oxytocin / 唾液中ホルモン / 心理評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の研究計画に基づけば本年度は最終年度であり、研究をまとめ、報告する段階となっていた。しかしながら、研究代表が2019年4月に所属を移動したことにより新たな研究チームを獨協医科大学埼玉医療センター内に再編成する必要が生じた。 令和元年の獨協医科大学埼玉医療センター・子どものこころ診療センターにおける研究対象者リクルート及びデータ収集は順調であり、抑制課題遂行時のADHD児と定型発達児の反応の違いは先行研究(Monden et al., 2015)同様に本研究でも得られている。その一方で、被虐待児を含むマルトリートメント児らの脳機能計測結果からは先の2群とは異なる反応が得られた。この結果の分析にあたり、例えばこの課題、この条件でのみ生じる事象なのか、課題を遂行していない時、或いは別の課題の時にも同様の反応になるのかを検証する必要性が出てきた。 唾液中ホルモン計測結果に関しては3群間に有意差は認められなかったものの、効果量検定ではある群間において効果があるとみなされる値が生じていた。そのため、引き続きデータ数を増やし、3群間の唾液中ホルモンの状態を観察する必要が生じている。 心理評価に関しては、定型発達児とADHD児、被虐待児を含むマルトリートメント児の知的発達の差が顕著であること、また多動・衝動性や、社会性、コミュニケーション、そして自身に関する困難さ等で有意な差が認められている。 尚、これまでの研究成果は、本年度に行われた小児精神神経学会(福井)、及び日本子どもの虐待防止学会学術集会(兵庫)その他、看護協会等(埼玉)の研修等で研究の進捗として報告している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、虐待判定の客観的エビデンスを反映した複合評価モデルをfNIRS,唾液中ホルモン値、心理評価を用いて構築することを目的としている。 研究代表の所属が中央大学から獨協医科大学へと変更となり、それまで外部研究者としての研究環境は万全に整っていたが、内部研究者として研究チームを構築しfNIRS計測スタッフの確保、及びワークフローシステムを新たに構築する必要が生じた。 これまでに実施したfNIRSを用いた脳機能計測データからは、先行研究とは異なる波形が被虐待児を含むマルトリートメント群で観察された。その傾向がどのような要因によって構成されているのかを更に詳しく調べる必要性がこの時点で生じてきた。本来であれば当初の計画にあったウエアラブルfNIRSを用いてADHD児、定型発達児とも異なる、虐待による影響を捉える予定であった。しかし、我々が行った研究結果からはウエアラブルfNIRSが捉える領域は余りにも狭く、虐待を含むマルトリートメントの影響が生じる可能性のあるその領域を十分に捉えることが出来ないということが明らかとなった。その為、今回得られた事象が実施した課題(抑制課題)時のみに生じるものなのか、課題を行っていない時にも同様の傾向がみられるのかを、比較検討をする必要性が出てきた。 また、唾液中ホルモン計のOxytocin測定では予め検体をフリーズドライにより4倍濃縮をかけた後にELISAを実施することにした。その結果、以前よりもデータ取得率が上がっている。唾液中CortisolとOxytocin値の3群比較(ADHD/TD/Maltreatment)において有意差は認められないものの、ある傾向が認められている。そのため引き続き被験者数を増やし、得られた情報の要因を追求したいと思う。 上記の事から、研究実施期間を1年延長し、研究を継続して行う必要性が生じてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、これまでの研究結果を元に、特に被虐待児を含むマルトリートメント児らを対象とした脳機能計測において、別の課題及び課題を実施していない状態での脳機能計測を実施する予定である。 また唾液中ホルモン測定に関しては、これまでに得られたデータの高い効果量が認められているグループのデータ収集を引き続き行い昨年度までに得られた反応が一時的なものであるのか、それとも実際の群の特徴を反映したものなのかを見極める。 今年度は、前半部分で不足データの収集を行い、これまでの研究をまとめていく方針ではあるが、現在の通常とは異なる社会情勢下、研究協力者(児童)を見つけることがこれまで以上に難しい状況となっている。 昨年度児童福祉法の改正において体罰の禁止が法定化された。これまで子どもを不当に扱う親たちに曖昧にされてきた「しつけ」としての「体罰」は、今後見逃されることはなくなるであろう。そのため、本研究の目的である虐待判定の客観的エビデンスを反映した複合評価モデルは確実性の高いエビデンスと共に構築される必要がある。今の時点で出来ることを可能な限り最大限に実施し、その過程を通してモデルを構築を行いたい。
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Causes of Carryover |
これまでの研究結果を踏まえ、脳機能計測および唾液中ホルモン測定を継続実施することとした。そのために前年度予算の残り分から唾液中ホルモン測定用のELISA kit(30万円分)の予算を確保し20名前後を対象とした研究を引き続き行う予定である。 また得られたデータを論文として発表するために、論文の英文校正(10万円)及び、投稿料(25万円:オープンアクセスの場合)なども確保する。 当初の計画では、中央大学の檀一平太教授と共同で本研究を行う予定であったが、檀教授の予想を超える忙しさのため本研究への関与が困難となった。本研究の研究協力者である獨協医科大学埼玉医療センターの作田教授が分担研究者として加わることにより、これまで以上にスピーディに研究を遂行し、得られた知見を学術的に意義のあるものへと具体化出来るよう研究協力体制を強化する。
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[Journal Article] Acute administration of methylphenidate differentially affects cortical processing of emotional facial expressions in attention-deficit hyperactivity disorder children as studied by functional near-infrared spectroscopy2020
Author(s)
Megumi Kobayashi, Takahiro Ikeda, Tatsuya Tokuda, Yukifumi Monden, Masako Nagashima, Sakae G. Mizushima, Takeshi Inoue, Keiichi Shimamura, Yuta Ujiie, Akari Arakawa, Chie Kuroiwa, Mayuko Ishijima, Yuki Kishimoto, So Kanazawa, Takanori Yamagata, Masami K. Yamaguchi, Ryoichi Sakuta, and Ippeita Danb.
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Journal Title
Neurophotonics
Volume: ー
Pages: ー
DOI
Peer Reviewed
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