2021 Fiscal Year Research-status Report
fNIRS脳機能計測に基づく虐待判定のための新たな客観的指標の創生
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17K01915
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
水島 栄 獨協医科大学, 医学部, 研究員 (00790940)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
檀 一平太 中央大学, 理工学部, 教授 (20399380) [Withdrawn]
作田 亮一 獨協医科大学, 医学部, 教授 (40254974)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マルトリートメント / 児童虐待 / ADHD / fNIRS / Cortisol / Oxytocin / 唾液中ホルモン / 心理評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、虐待判定の客観的エビデンスを反映した複合評価モデルをfNIRS,唾液中ホルモン濃度、心理評価を用いて構築することを目的としている。これまでに本研究で収集されたfNIRSによる脳機能計測データからは、先行研究とは異なる波形が被虐待児を含むマルトリートメント群で観察されている。一昨年度に加え更に1年研究期間を延長し、ADHD児と被虐待児を含むマルトリートメント児の脳機能の違いを2群間比較により明らかにし、その違いを決定づける領域の明確化を試みようと計画していたが、昨年同様コロナ感染症の感染拡大の影響により、子どもを対象とした研究を獨協医科大学埼玉医療研究センター・子どものこころ診療センターにて安全に行うこと自体が難しかったため研究の遂行が困難であった。 本研究のもう一つの客観的な指標となる唾液中ホルモン濃度測定は、唾液を専門のスポンジで採取し、そこからELISA解析によりCortisol/Oxytocin濃度を測定することで、子どものストレス状態等を把握することを目的としていたが、コロナ感染症の感染予防という観点から唾液採取に関しては、研究者・被験者双方が安全に取り扱えるまでは実施を控えることとなった。 その一方で、fNIRS解析ソフトウエアOpen PoTAToが一般に公開され、それに伴い、第23回光脳機能イメージング学会でのセミナーが開催された。そのセミナーに参加し、新たなNIRSデータ解析を学び実際のデータで解析を行っているところである。 尚、これまでの研究成果は、日本子どもの虐待防止学会学術集会(かながわ大会:当日会場発表及び後日オンデマンド視聴開催)、令和3年埼玉県子どもの心の地域子育て支援事業研修会(Online開催)、及び厚生労働省主催によるフォスタリング機関研修、またルーテル学院大学大学院特別講義、東京家政大学心理実習特別講義等で研究報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2017年から開始し、これまでに実施したfNIRSを用いた脳機能計測データからは、門田らが2015年に行ったADHD児を対象とした先行研究とは明らかに異なる波形が、被虐待児を含むマルトリートメント群で観察されており、この傾向がどのような要因によって構成されているのかを更に詳しく調べる必要が生じている。当初の研究計画では児童相談所内にある一時保護所などでも計測可能な通常のNIRSよりも簡便に脳機能を計測できるチャンネル数の少ない持ち運び可能なウエアラブルfNIRSを導入する予定だったが、虐待を含むマルトリートメントの影響が生じる可能性のある領域を少ないチャンネルのNIRSでは十分に捉えることが出来ないことが明らかとなったため、当初予定していたウエアラブルNIRSは使用しないこととし、研究計画を変更した。 本研究の軸となるfNIRS脳機能計測,唾液中ホルモン濃度測定は、実際にヒトを対象として情報収集を行うため、現在の状況下では研究遂行の安全性が得られないため実施が困難な状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、コロナ感染症まん延防止対策措置が長く続いたため、これまでに得られたデータ解析や海外の先行研究の情報収集などに重きを置いた。 令和2年から3年にかけて国内外で発表されているCOVID-19 の子どもと家族への影響に関する報告では、子どもを取り巻く環境の悪化や、家族関係の悪化についての報告が増えている。これらのことから子どもが健全に育つことが難しい時代であるからこそ、児童虐待を含む親から子へのマルトリートメントがその後の子どもの人生、ひいては社会全体にネガティブに影響することを具体的なエビデンスによって人々が理解することが重要だと思われる。そのためにも、本研究の結果を出来るだけすみやかにまとめて、世界に向けて広く伝えていきたい。 また社会状況が今より改善された場合には、チャンネル数の多いポータブルfNIRSが近年いくつか開発され商品化されているため、可能であればそれらを用いて本研究を継続し、実際の大型NIRSと小型NIRSのデータの再現性と差違を検討し、社会実装に向けて前進したい。
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Causes of Carryover |
研究代表の水島担当分においては、これまでに得られたデータから継続して被験者からの情報収集を模索したが、当該年度はそれが困難だったため、次年度に継続使用予定である。 共同研究者である作田亮一教授の担当である論文化関連経費も上記の要因から令和3年度には経費が発生しなかった。次年度は現時点の研究をまとめていく方針であり、作田教授との協働が必須となる。令和3年度までは水島(研究代表)と作田教授が同じ機関に所属していたため、情報共有は頻繁に出来ていたが、水島の所属が変更になったため、分担研究者との情報共有には予め日程調整を行いZoom等での会議を開き、情報共有作業が必要となる、次年度はそのための経費も発生する。 また令和4年度は、論文化に際して英文校正及び投稿費用などが発生する予定である。また、国内地方で開催される学会での研究発表を計画しているため、旅費が発生する。最終的には本研究を通して得られた知見を広く国内外に発信する予定である。
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Research Products
(5 results)