2017 Fiscal Year Research-status Report
The field survey of animal-rearing at school after the bird flu outbreak and the impact of school animal-rearing on children's psychological development
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17K01927
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Research Institution | Otemae University |
Principal Investigator |
中島 由佳 大手前大学, 現代社会学部, 准教授 (80712835)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 学校での動物飼育 / 鳥インフルエンザ後 / 小学校 / 子どもの心理的発達 / 全国調査 / 継続調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,①小学校での動物飼育についての全国調査による,学校動物飼育の現状と課題の解明,②学校動物の飼育方法の違いと教育的効果との関係についての,心理的発達を指標としての縦断的な調査であった。2017年5・7月の研究運営会議を経て,以下の調査を行った。 ①全国調査:全国小学校理科教育研究協議会を通し,動物飼育を行っている小学校1,700校へのアンケート調査を依頼。平成30年5月の時点で,FAXにより477件Webにより屋内飼育57件、屋外飼育85件の回答を得た。また電話調査では,全国約20,580校の10分の1にあたる2,000校の小学校を無作為抽出し,電話により動物飼育の有無,飼育種,動物の世話等を調査。 ②継続調査:愛知県、西東京市、福岡県、神戸市、奈良市の49小学校に第1回調査を実施。学年飼育校23校(対象児童約1,700名)に2017年12月にアンケートを送付。また委員会飼育校19校(同約2,500名),飼育なし校8校(同約1,100名)に2018年3月にアンケートを送付。 意義および重要性 全国調査は,鳥インフルエンザ発生以後初となる全国規模での調査となる。特に無作為抽出による全都道府県約2,000校への電話調査はわが国の学校動物飼育の現状を明確化しうる貴重なデータとなる。 また継続調査は,多くの獣医師・心理学研究者・小学校の協力を得て「学校での動物飼育が子どもの心理的発達に与える影響」に関する,わが国初の地域を跨いでの大規模研究となった。また,飼育をしている児童,飼育はしていないが学校に動物がいる児童,飼育動物がいない学校の児童を高学年/低学年別に比較する本研究は,先行研究には見られない独自性と複雑性を有する。実行可能性の高い研究計画を立案し,第1回目の調査を実施し得たことは,第2回・第3回と続く調査研究貫徹のための礎を築き得た点において重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全国調査:計画は「全国各地の約1000校を抽出し飼育動物の現状と課題について質問紙調査」であった。しかし当初想定していた2つの実施手段,すなわち行政への依頼(日本獣医師会の協力を得て都道府県の家畜伝染病予防法の調査データを取得),教育委員会を通じての依頼(市町村の教育委員会への協力を依頼→承諾を得た市町村教育委員会には,質問紙調査を行う小学校の選定を依頼→選定された小学校に調査依頼)は実行がかなわなかった。そこで,無作為抽出による全都道府県約2,000校への電話調査により,当初予定していた動物飼育の実態(飼育の有無,飼育動物種など)を実施。また,全国小学校理科教育研究協議会を通しての飼育実施校への調査により,当初予定していたアンケート調査(飼育担当の教職員・児童について,飼育上の課題・問題点,飼育の利点・欠点,動物の病気・死亡時の対応,獣医師との連携等)を遂行。 継続調査:当初の計画は,これまでに調査協力実績のある小学校約15校に対し継続調査を依頼することであった。調査においては,第1回~第3回までの継続調査であるため各調査回の各児童の回答が照合できるよう出席番号を記すなど,学校との信頼関係を築くことが調査成立の鍵であった。しかるに本研究では,各地方獣医師会の協力により想定を超える49校約5,000名以上の児童の協力を得ることができた。また当初は第4学年の児童のみへの調査を想定していたが,低学年への調査の協力もいただき,結果的に学年飼育校,委員会飼育校,動物飼育なし校とも,第4学年および低学年における調査を行うことができた。第1回目調査の回収も順調で,想定した回収率が望みうる。 継続調査が成り立つためには、平成29年度中の第1回調査は必須である。また全国調査も研究計画上平成29年度中に着手する必要があった。その点においても本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度 以下の通りの全国調査,継続調査の実施を計画。 全国調査:アンケート調査に関しては,平成30年度は採集されたデータの入力・分析を行い,その結果に関する執筆を開始する。電話調査に関しては引き続き調査を継続するとともに採集されたデータの入力・分析を行い,その結果に関する執筆を開始するとともに,地図での統計図の作成を行う。 継続調査: 第1回調査で採集されたデータの入力,分析を行う。また,全協力校に第1回目の分析結果を送付する。年度末には第1回調査で協力を得た学年飼育校(23校)、委員会校(19校)、飼育なし校(8校)に対し,第2回調査のアンケート用紙を送付。児童へのアンケート調査を実施する。 平成31年度 学年飼育校に対し第3回調査を行う。併せて平成29,30,31年度に得られたデータの分析を行うとともに,調査結果等を取りまとめて報告書を執筆する。報告書を教育機関,獣医師を始めとする関係各位に伝えるとともに,シンポジウムを開催し,学校動物飼育の今後のために必要とされる課題解決について議論を深める。 研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での課題:継続調査においては想定を超える小学校・児童の協力を得られ,また全国調査においても当初の想定の約2倍の標本数が得られる。このためデータ入力のための費用が想定を大幅に超えて発生。データ入力費用捻出のために旅費等を当てることとし,訪問調査(全国調査および縦断調査の参加校の中で,動物飼育に関して注目できる小学校への訪問調査)の規模の縮小あるいは割愛の可能性を現在検討している。
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Causes of Carryover |
タブレットおよびその周辺機器の購入を見合わせたこと,また統計用ソフトウェアの購入を次年度に先送りしたこと等により,次年度使用額が生じた。平成30年度に先送りされていた統計用ソフトウェアの購入,データ入力の外注により発生する支出に次年度使用額の一部を充てることを念頭に,調査対象校50校への分析結果の送付および第2回アンケート調査の送付,研究打ち合わせ・調査等の旅費などに次年度使用額および平成30年度の助成金を使用する。
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