2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K01974
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
繁冨 英治 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (00631061)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アストロサイト / てんかん / カルシウム / P2Y1受容体 / IP3受容体 / てんかん重積 / 遺伝子発現解析 / IP3R2KO |
Outline of Annual Research Achievements |
アストロサイトのCa2+シグナルにおいて中心的な役割を果たすP2Y1受容体をアストロサイト選択的に過剰発現するマウスは薬物誘発てんかん発作易感受性を示すが、なぜアストロサイト選択的P2Y1受容体過剰発現が、神経の興奮性を上昇させるのか、そのメカニズムは不明である。P2Y1受容体下流の主要なシグナル分子にIP3受容体2型(IP3R2)がある。アストロサイト選択的P2Y1受容体過剰発現(P2Y1OE)マウスに、IP3R2欠損動物を交配させて、このマウスの薬剤誘発てんかん発作閾値について検討した。IP3R2を欠損させると、アストロサイト選択的P2Y1受容体過剰発現によるてんかん発作閾値の低下が起こりにくい傾向にあった。しかし、再度取得した対称群P2Y1OEにおけるてんかん閾値低下が起こりにくい傾向にあった。この問題は、当該遺伝子改変マウスの遺伝的背景が原因の1つと考えらえた為、C57BL6Jにバッククロスしたマウスを作出し再度検討中である。以上に加えて、アストロサイト選択的P2Y受容体過剰発現が、神経細胞の興奮性を上昇させる細胞メカニズムを明らかにする目的で、アストロサイト及び神経細胞に異なる色のCa2+感受性蛍光タンパク質を発現させて、二光子励起レーザー顕微鏡下にこれら2種の細胞活動の同時Ca2+イメージング(Dual color Ca2+ imaging)を行った。その結果、P2Y1OEでは、刺激誘発応答神経活動が延長することが示された。この神経活動の延長は、P2Y1受容体の活性化を介していた。以上の結果から、アストロサイト選択的P2Y1受容体過剰発現によって、神経細胞の興奮性を上昇させるアストロサイト由来因子の遊離が促進している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アストロサイト由来てんかん誘発因子を同定するために、P2Y1OEマウスのアストロサイト由来遺伝子発現解析を当年度中に終了する予定であった。しかし、当該遺伝子改変マウスの遺伝的背景が実験結果に影響しうる可能性が判明したため、予定していたRNA-seq実験を延期し、遺伝的背景を適切化した。一方、アストロサイトと神経細胞活動の同時イメージングを行った結果、P2Y1OEでは、アストロサイト由来因子が神経活動を上昇させることが示唆された。この結果は、P2Y1OEの解析によりアストロサイト由来てんかん誘発メカニズムを調べることが可能であることを支持するものである。これによって、RNA-seq解析を進めてアストロサイト由来てんかん誘発因子を同定する上で対象とする遺伝子群を絞り込む手掛かりとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
RNA-seqに用いる予定のマウスは安定して供給可能な状況になったため、できるだけ早い段階で、アストロサイト由来のRNAを抽出しRNA-seqを行う。これと同時に、dual color Ca2+ imagingを進めることにより、P2Y1OEにおいて、てんかん発作閾値が低下するアストロサイト由来メカニズムを明らかにし、アストロサイト由来てんかん閾値誘発因子の同定を試みる。
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Causes of Carryover |
本年度は、アストロサイト特異的P2Y1受容体過剰発現マウスを用いたRNA-seqを予定していた。しかし、当初用いていた当該遺伝子改変マウスの遺伝的背景が実験結果に影響しうる可能性が判明し、予定していたRNA-seq実験を延期した。その結果、RNA-seq実験用の予算を次年度に使用できるように持ち越した。
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