2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K01974
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
繁冨 英治 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (00631061)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アストロサイト / てんかん / カルシウム / P2Y1受容体 / てんかん重積 / カルシウム感受性タンパク質 / グルタミン酸センサーたんぱく質 / 遺伝子発現解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
アストロサイトのCa2+シグナルにおいて中心的な役割を果たすP2Y1受容体をアストロサイト選択的に過剰発現するマウスは、薬物誘発てんかん発作に対する易感受性を示す。しかし、なぜアストロサイト選択的P2Y1受容体過剰発現(P2Y1OE)が神経の興奮性を上昇させるのか、そのメカニズムは不明である。この細胞メカニズムを明らかにする目的で、アストロサイト及び神経細胞に異なる色のCa2+感受性蛍光タンパク質を発現させて二光子励起レーザー顕微鏡下にこれら2種の細胞活動の同時Ca2+イメージング(Dual color Ca2+ imaging)を、海馬CA1領域を含む急性脳スライス標本を用いて行った。これまでに、P2Y1OEでは電気刺激誘発神経Ca2+応答が延長することを見出していたが、本年度は、その原因となる細胞メカニズムについて検討した。薬理学的な解析を行ったところ、P2Y1OEで観察されるアストロサイトのCa2+応答が神経Ca2+応答の延長に寄与することが分かった。アストロサイトのCa2+応答は、NPPBあるいはprobenecidなどに感受性のあるATP放出経路から放出されたATPがアストロサイトのP2Y1受容体を活性化することにより起こることを見出した。グルタミン酸センサータンパク質を用いたイメージングにより、P2Y1OEでは電気刺激誘発グルタミン酸放出が増加することが判明した。これらの結果より、アストロサイトのP2Y1受容体依存的なCa2+応答が神経活動を延長・増強する原因として、アストロサイト由来グルタミン酸放出増加の可能性が示唆された。また、P2Y1OE由来の単離アストロサイトからRNAを抽出しRNA-seqを行い、神経興奮性と関連する可能性のある変動因子を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
P2Y1OEのアストロサイトにおけるトランスクリプトーム解析用のRNAを取得できた。また、グルタミン酸センサーによる解析を追加することができ、P2Y1OEにおいて神経興奮性が増加する細胞メカニズムの詳細により迫ることができた。以上により、概ね期待される成果を上げることができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
RNA-seqによって得られたP2Y1OEアストロサイトの遺伝子発現プロファイルと、すでに研究室にあるてんかん重積モデルマウス由来のアストロサイト遺伝子発現プロファイルを比較検討し、P2Y1OE由来アストロサイトとてんかん重積モデル由来アストロサイトの共通遺伝子群を明らかにする。これまでに得たイメージングの結果と合わせて実験データを解釈し、P2Y1OEでは薬剤誘発てんかん重積を起こしやすい細胞メカニズムを明らかにする。実験成果をまとめて、国際誌に報告する。
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Causes of Carryover |
トランスクリプトーム解析受託の終了予定が次年度になる見込みであったため当該受託の費用分の差額が生じた。また、研究成果を論文として報告するために必要となる掲載料等の費用の差額が生じた。これらの差額分は速やかに目的に応じて使用する。
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