2021 Fiscal Year Research-status Report
ボルネオ社会編成の基礎研究:汽水域・流域・間流域からの新モデル構築
Project/Area Number |
17K02017
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石川 登 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 教授 (50273503)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | プナン / ヴァイ・スガン / 民族 / イスラム化 / サラワク / マレーシア |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度はコロナ禍のもとで海外渡航を実施することができず、マレーシアにおける臨地調査のために計上していた予算の執行を行うことができなかった。本科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)については、補助事業期間延長承認申請書を提出し、研究計画変更に伴った補助事業期間の延長を行った。2021年度は、文献研究のみをおこない、マレーシア領サラワク州Kemena川水系の「中流域」と「汽水域・沿岸部」で、山地民起源のイスラム系民族集団Vaie Segan(バイ・スガン)とイスラム化が進行する元狩猟採集民集団Penanについての資料収集を行い、以下の知見を得た。「中流域」は内陸部にありながら「擬似下流」としての性格をもち、沿岸部から遡上したイスラム商人と森林産物をもたらす山地民との交易拠点となってきた。同地域ではVaie Segan を中心としたイスラム・コミュニティが形成され、Penan などの先住山地民のイスラム化も進んでいる。これに対して「汽水域・沿岸部」では、イスラム化した山地民の下流への移住などの長期プロセスを経て、Vaie Segan に加えてPenan Islamなどのイスラム集落が形成され、Melanau やSarawak Malay などの平地イスラム集団との混住が進んでいる。 これらの知見は、従来、東南アジア海域社会における「山地」対「平地」といった生態環境の二分法的理解に基づいた民族範疇の固定化に疑義を投げかけるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年度はコロナ禍のもとで海外渡航を実施することができず、マレーシアにおける臨地調査のために計上していた予算の執行を行うことができなかった。本科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)については、補助事業期間延長承認申請書を提出し、研究計画変更に伴った補助事業期間の延長を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に実施した文献調査により、Kemena 川流域では、英国社会人類学者のE. リーチが「文化的遷移」(Cultural Drift) と称した山地民のイスラム化が現在も進行し、下流への移住ならびにBintuluへの向都移動を通して、山地民の改宗者と子孫からなるイスラム・コミュニティが形成されていることが確認された。「擬似マレー」(Para-Malay)と分類されたこれらの民族集団は、汽水域・沿岸部において人口を増大させている。同地においては、イスラム化したPenan集落があり、これに関して社会人類学者R. ニーダムが残した民族誌情報との比較調査が可能であることが判明した。更にBintulu 郊外の沿岸部では、Penan Islam、Penan Musimという行政村落名をもつ採集狩猟民を始祖としたイスラム・コミュニティの存在を確認している。これらの集落においては、移住史、親族関係などの基礎データに加えて、言語使用状況、内陸山地民コミュニティとの社会関係などについての聞き取り調査を実施する予定である。
Leach, Edmund 1950. Social Science Research in Sarawak: Report on the Possibility of a Social Economic Survey of Sarawak presented to the Colonial Social Science Research Council, Colonial Office. Needham, Rodney. 1965. Death-Names and Solidarity in Penan Society. Bijdragen tot de Taal-, Land- en Volkenkunde 121 (1): 58-75.
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Causes of Carryover |
コロナ禍により調査地マレーシアに渡航することが不可能であり、予算の繰越を行った。
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