2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K02083
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
浅井 美智子 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 客員研究員 (10212466)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 卵子提供 / 代理出産 / 遺伝子診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の最大の研究成果は、まず、「スペイン(バルセロナ)における不妊治療クリニックにおける不妊治療・卵子提供」について以下のことが明らかになったことである。①提供卵子・精子による体外受精はどこでも可能であり、卵子の選択(提供者の諸条件)が可能なクリニックもあること。②提供精子・卵子による不妊治療の適用者はレズビアンカップル、シングル女性が容認されていることは特筆すべきである。③スペインは欧州では卵子保有率が高いことは知られているが、提供を受ける側が卵子提供者の選択ができないことになっていたが、今回の調査でそれが可能であることがわかった。④バルセロナでは、日本人患者を手助けするクリニックはほとんどなかった。日本人スタッフが一人いるクリニックがあるだけである。今後の検討がひつようだが、スペインでの卵子提供を受けるに日本人が増える可能性は低いと思われた。⑤着床前診断などの遺伝子検査の有無について調査する必要があることが今年度の調査でわかった。 スペインには『人工生殖補助医療技術に関する法律』第10条がある。「10条3. 一般規則(総則)に従って、生物学上の父親ということに関して父子関係の要求行動は正当であり続ける」という法律があることがわかった。つまり、カップルの一方を遺伝的父親であることを法律的に認めるための請求が可能であるということである。日本では男女のカップルの受精卵を第三者に出産してもらった場合、遺伝的親であるという法的承認は得られない。特別養子縁組法に依拠して親になる以外にない。国境を越えた生殖が国内法と整合不可能なことが多々起こっていることは明らかである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に研究が進められている。ただ、日本人が海外に提供卵子を求めてきた経緯(アメリカ→韓国→台湾→インド→タイ→スペイン)という経緯を予測していたが、現状において、スペインはすでに少数化していることがわかったため、現状分析の必要性がわかった。そこで、研究計画を練り直しているので当初計画に変更がでることが予測される。 また、今年度で得た研究成果は大きく、調査結果が古くならないうちに文書化しておく必要が生じた。大阪公立大学出版会からリールレットという形でまとめる予定である。そのために消耗品経費約39万円を繰り越した。
|
Strategy for Future Research Activity |
上記進捗状況でも触れたが、スペイン(バルセロナ)で日本人が卵子提供を受けた不妊治療へのアクセスが多いことがわかり調査する予定にしていたが、今年度の調査から、すでにスペインでの卵子提供のピークは過ぎていることがわかった。では、日本人はどこで卵子の提供を受けているかが問題である。まず、日本国内での卵子提供の現状を詳細にリサーチする。次に海外に行く場合、どこへ行っているのかを明らかにしたい。一挙にどこの国ということはすでになくなっていると予測される。したがって、不妊治療にかけられる予算、不妊患者の渡航への障壁の有無、子どもを持つことへの意欲、これまでの不妊治療の経緯、年齢などの諸条件と海外での不妊治療への希望者と経験者等の調査をしたいと考えている。ネットによる調査になるが、匿名での回答、数量的処理を掲げることによって、かなり正確な情報が得られると予測している。 したがって、スペインの様子に関する現地調査は断念することになる。最近話題となっている日系人の多いハワイでの提供卵子による不妊治療の現状に関して調査が可能かどうかを探りたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
海外で、とくにスペインので「提供卵子による生殖」がクローズアップされており、本研究ではバルセロナの不妊治療クリニックに次年度調査に赴くための予備調査を行った。ところが、海外での提供卵子による不妊治療はめまぐるしくその対象国が変化しており、スペインでの治療が拡大することはないと予測された。しかし、この成果を放置しておくと無意味になるため、大阪公立大学出版会のリーフレットに研究成果をまとめ出版の準備を進めている。そのための費用約39万円を繰り越した。
|
Research Products
(3 results)