2019 Fiscal Year Research-status Report
ダリット女性および部落女性における複合差別とエンパワーメントに関する国際比較研究
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17K02097
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
熊本 理抄 近畿大学, 人権問題研究所, 教授 (80351576)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | カースト / 複合差別/交差性 / ケイパビリティ / 主体性 / 社会運動 / コミュニティ / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は以下の研究を実施した。第1に、これまでの研究成果として『被差別部落女性の主体性形成に関する研究』を出版した。出版は、文部科学省の科研費(25570020)の助成に基づいた研究成果であるが、本研究の成果を踏まえ、インド社会におけるダリット女性(被差別カースト女性)による差別からの解放を求める取り組みについて加筆した。 第2に、ミシガン大学の研究者の来日にあわせて、共同研究に取り組んだ。低所得階層の仕事に従事する人々がどのように尊厳を奪われ、周縁化されてきたのか、どのようにしたらこれらの課題を可視化できるのかといった点に問題意識を持ち、被差別部落女性にインタビューを実施した。 第3に、インド社会のダリット女性が価値ある生き方を選択する自由(ケイパビリティ)をどのように広げるのか、その課題はなにか検証し、研究紀要に投稿した。具体的には、南インドのタミルナドゥ州を活動拠点とし、インド政府のスキームを活用しながら活動を展開するNGOを取り上げ、「教育とトレーニング」「経済的自立」「行政施策の活用」「政治的意思決定への参加」「文化活動」それぞれによるケイパビリティの拡大過程を考察し、その拡大を阻む女性の社会的位置に関する課題を論じた。 性、人種、階級など、いくつもの条件のからみあいと社会的権力関係の中に位置づけられているダリット女性および被差別部落女性の課題解決に際して、「複合差別」概念に基づいた実態把握と理論構築を行なうためには、マイノリティ・フェミニズムの分析比較、及び各国の「差別論」の比較研究が重要であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
インド社会及びネパール社会におけるインタビュー調査、国連、国際社会、国際地域社会、各国社会、地域社会における主体性形成の取り組み調査については順調に進んでいるが、複合差別と主体性形成に関する文献調査、理論研究の面でやや遅れている。 これはこれまでの研究実績から、カーストや世系にとどまらない「差別論」の比較研究へと研究内容が広がっていることに依るものである。欧米社会におけるカースト研究をレビューする意義が認められることから、研究者のネットワークならびに文献収集へと研究内容を広げているため、文献調査、理論研究の面でやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、日本の複合差別論を含む差別論が独特の知的達成を経てきたことが明らかになった。2020年度は、差別論の研究実績、研究方法論、人的ネットワークを有している米国社会における研究者との、intersectionalityの視角と運動論的視角を踏まえた国際共同研究に着手する。
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Causes of Carryover |
2月から3月にかけて海外研究を実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受け、研究計画を立てることができなかった。 海外研究が可能となった時点で、旅費等として使用する計画である。
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Research Products
(2 results)