2021 Fiscal Year Research-status Report
ダリット女性および部落女性における複合差別とエンパワーメントに関する国際比較研究
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17K02097
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
熊本 理抄 近畿大学, 人権問題研究所, 教授 (80351576)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 複合差別 / 二重、三重の差別と圧迫 / インターセクショナリティ / ブラック・フェミニズム / 部落女性 / 解放運動 / ダリット・フェミニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、性、人種、階級など、いくつもの条件のからみあいと社会的権力関係の中に位置づけられている部落女性およびダリット女性の課題解決に際し て、「複合差別」概念に基づいた実態の把握および理論の構築にある。この目的を踏まえ2021年度に実施した研究は、以下の二点である。 第一に、2022年3月に全国水平社創立100周年を迎えたことから、1920年代に部落女性が提起した「二重、三重の差別と圧迫」概念、1950年代以降に用いる「二重差別」、さらに1990年代以降に使われる「複合差別」概念の歴史性について、多くの研究会で報告するとともに、複数の媒体で研究成果を発表した。これら概念を生み出すに至る歴史的背景ならびに時代性を明らかにするとともに、それら概念を用いながら、部落女性がみずからの実態把握を試みた点、抑圧構造を明らかにするとともに抵抗思想を構築しようとした点に焦点をあてた。「複合差別」概念に基づいた実態把握および理論構築の具体的方向性を提示したところに、研究成果の意義がある。 第二に、ブラック・フェミニズムが定義したところの「インターセクショナリティ」概念が日本で流通していることを受け、ブラック・フェミニズムによる「インターセクショナリティ」概念と、部落女性による「複合差別」概念の共通点および相違点を明らかにし、研究会での報告、研究成果の発表を行なった。「インターセクショナリティ」概念から自前の抵抗理論と抵抗実践を展開しているダリット・フェミニズムに関する先行研究を精査することにより、フェミニズムにおける差異の政治、連帯の政治に関する問題提起をした。ここに研究成果の重要性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、計画していた海外調査が実施できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
インド調査の目途が立たないことから、ダリット・フェミニズムに関する文献研究を発展させる。インドの研究者とオンラインによる研究交流を推進し、部落女性の解放運動とダリット・フェミニズム間における研究上の連携構築を具体化する。
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Causes of Carryover |
海外調査および海外招聘が実施できなかったことから次年度使用額が生じている。文献研究を発展させる。
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Research Products
(5 results)
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[Book] 現代の部落問題2022
Author(s)
朝治 武、黒川 みどり、内田 龍史
Total Pages
550
Publisher
解放出版社
ISBN
978-4-7592-4130-3
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