2017 Fiscal Year Research-status Report
観光のサービス・イノベーションにプレイス・ブランディングが与える影響に関する研究
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17K02103
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
内田 純一 小樽商科大学, 商学研究科, 教授 (40344527)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 観光産業クラスター / 観光地ガバナンス / ガバナンス・モード / サービス・イノベーション / ブランディング |
Outline of Annual Research Achievements |
観光地の発展には複数の経路がある。具体的には、公的部門などのフォーマル部門が先導する場合と、インフォーマル部門による地域資源の活用の蓄積が地域の方向性を徐々に形成する場合である。これら部門間のイニシアティブはその発展段階によって異なる。また、地域資源を観光開発に応用する「発見」機能はインフォーマル部門が有することが多い。フォーマル部門による観光開発は、この発見機能を失わせず地域ブランディングしていく必要がある。 そこで本研究では、観光地の発展のために、地域資源の発見が継続的かつ創造的に行われるための政策や戦略のあり方を考察することを研究目的に設定して調査を開始した。 一般的に、観光地として望ましい形は、地域資源の発見機能を官・民いずれかのセクターが有していて、フォーマル部門による大規模な観光開発と、インフォーマル部門による新たな観光空間の創造とが相互補完の形で存在した状況である。このような観光地はクラスターの段階に近づいていると見なすことができるだろう。 本研究においては、クラスター化の段階へ移行するまでの発展経路を探るため、観光地におけるガバナンスの変遷を時系列的に分析しつつ、ガバナンスモードの変異プロセスを描写し、サービス・イノベーションを叢生させるクラスターへと進化するダイナミクスを明らかにしようとしている。 現在までに行った観光地のフィールド調査により、大企業や外資の誘致・進出が、さらなる民間投資を招き入れ、発展が加速する事例を素材データとして収集した。また、観光産業向けにサービスを展開する観光以外のサービス業が、観光地に進出した後にイノベーションを牽引する事例も収集した。それらの事例データを用いて、クラスターとしての特徴や観光関連事業者同士のアクター・ネットワークの傾向等を図示しながら論説にまとめ、学会等で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、観光地の発展段階や、観光地をとりまく環境条件の異なる複数の観光地を分析している。公的部門が直接フォーマルな大規模観光開発を行ったり、大企業を誘致して、公・民連携の成果を重ねたり、外資を含む民間活力を利用した投資を招き入れる(つまり、非営利セクターがインフラ等の環境条件を整備する)ことで、一定程度まで発展する場合も考えられるし、ある程度まで観光インフラが整備された観光地では、別の地域資源を観光開発に応用する「発見」の機能が、インフォーマルな主体によって連続的に行われるイノベーション段階に進む可能性が出てくる。これらを比較しながら、そのダイナミクスを分析する必要があるからである。 当該年度においては、最も先進的であると思われる地域のフィールド調査を完了した(分析の対象としては北海道ニセコ地域)。しかし、比較の対象となる地域の調査は継続中である。いくつかのフィールド調査にもとづく研究発表を重ねることで、観光地としての望ましい形を観光産業クラスターとして設定した上で、それを目指す地域の観光開発のあり方を分類することが可能になるが、現在までの進捗はおおむね順調に推移していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究対象である二分野のうち、第一セット(観光産業をとりまくステークホルダー)、そして第二セット(観光事業者)の選定作業を、前年度から継続して実施する。また、観光系企業のサービス・ビジネスモデル分析と、地域内サプライヤー・ネットワーク分析の作業を本格的に開始する。分析手法としては、サービス提供の現場をネットワークカメラ等の媒体によってデータ化し、そのサービスフローを分析するなど、独自の分析作業を導入していく予定である。なお、今後の研究計画は、大きく二つの調査・分析作業からなる。 (1)業界調査・インタビュー調査 (2)観光系企業のビジネスモデル分析や地域内サプライヤー・ネットワーク分析 これら二つの分野にまたがるケース記述の作業も継続的に実施していく。 また、こうした研究データの蓄積を活用し、国内・外での学会発表、論文執筆作業にも注力しつつ、研究を推進する。 計画の変更は現時点では考えていない。
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