2021 Fiscal Year Research-status Report
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17K02115
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
福井 令恵 法政大学, キャリアデザイン学部, 准教授 (50724035)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 住民集団間関係 / インターフェイス・エリア / 移行期社会 / 観光 / 都市空間 / ブレグジット |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、北アイルランドの紛争後社会の住民集団間(イギリス系とアイルランド系)の関係が、観光を通じどのように変化したのかを明らかにし、<紛争後社会>における観光のあり方と可能性・課題をコミュニティ関係の観点から示すことを目的としている。敵対関係にあった二つの住民集団間の直接的な相互作用だけでなく、様々なアクター(アイルランド・北アイルランド政府、観光客)の存在と相互作用によって、紛争経験地域がどのような影響をうけたのか。またその結果生じた地域コミュニティ間関係について、より包括的な枠組みから考察する。 2020年度に引き続き2021年度も、Covid19パンデミックの影響で予定していた現地でのフィールド調査が不可能であったため、当初の研究計画を変更し国内で文献収集を行い、資料の分析を進めた。フィールドワークの内容を部分的にではあるが補うために、インターネットで公開されている現地の資料を調査するとともに、SNS等を通じて現地住民から情報を得ることに努めた。 イギリス(UK)のEU離脱は、北アイルランドの住民間の関係に大きく影響を及ぼしていることが明らかになっているが、調査対象地は紛争時代から対立関係に置かれたイギリス系とアイルランド系の住民集団が境を接して居住する地区(インターフェイスエリア)であり、この地域の住民間関係についてはとりわけ重要度が増してきている。そこで、この地区で進められる分断の象徴を撤去する政策について検討し、論文として発表した。また、アウトリーチとして、商業誌(キネマ旬報)に、インターフェイスエリアの現状について、解説文を寄稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度もCovid 19パンデミックのため海外渡航ができず、フィールド調査を行うことができなかった。そのため、予定していた聞き取り調査と現地での文献調査を行うことができなかった。そこで、日本国内で進められる研究に内容を変更した。具体的には、もともとフィールド調査を行う予定だった調査対象地で政府が進める分断の壁(ピースウォール)の撤去政策に注目し、そこから住民集団間関係を見ることとした。この撤去政策については、インターネット上で文書や資料の多くが公開されている。また調査地についての関連資料や大学の調査報告が複数出版されたため、それらの資料を読み、インターフェイスに住む住民のピースウォールに対する意識について整理した。そこで明らかになった内容と、2017年から2019年まで行った聞き取り調査をまとめ、論文として発表した。しかし、現地での調査ができなかったことにより、明らかにできた点に限界があった。したがって、「やや遅れている」と評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はもともとは海外フィールド調査を前提にしたものであるため、まずはフィールド調査を行うことを目指していく。しかしながら、2022年度も渡航が不可能であった場合は紛争経験地域の課題について、引き続き行政の政策に焦点を当てた研究や、以前収集した文化活動に関するデータの分析で研究論文を発表するなどの方針変更を考えている。
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Causes of Carryover |
2021年度に予定していた現地調査の実施を見送った。このため、現地への旅費に充てる予定であった予算に余剰が生じ、次年度への繰り越しが発生した。2022年度は、フィールド調査が可能な場合は、主として旅費に使用する。フィールド調査が不可能な場合は、資料収集およびこれまで収集したデータの分析に必要な費用(書籍や、機材・ソフトウェアなどの購入)に充てる予定である。
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