2018 Fiscal Year Research-status Report
Approaches to Urban Planning Driven by Cultural Consumption: The Roles and Significance of Enclaves in Global Cities
Project/Area Number |
17K02144
|
Research Institution | Chiba University of Commerce |
Principal Investigator |
榎戸 敬介 千葉商科大学, 政策情報学部, 教授 (60433091)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 文化的消費 / 観光 / 都市再生 / 公共空間デザイン / 都市間競争 / 土地利用計画 / エンターテインメント都市 / 都市マネジメント |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度に予定していた海外研修に変更が生じたため、研究拠点を当初予定のブリティッシュコロンビア大学ではなく勤務先大学としたことが研究体制に関する大きな変更点である。今年度は海外都市フィールドワークを研究活動の中心と位置づけ、カナダ・ケベック州・モントリオール市において実施したフィールドワークにより本研究を大きく前進させることができた。以下に主な実績を示す。 第一に、モントリオール市において、本研究がテーマとして探求する「エンクレイブ」の有力なモデル地区・プロジェクトを発見したことが挙げられる。このフィールドワークにおいて現地で収集した情報および現地専門家・実務家との間で継続的な情報交換のネットワークを構築したが、それによりこれまで知られていなかった事例についての詳細な情報収集が可能となった。また、ケベック州政府在日事務所からも研究協力を得ることができるようになり、本研究を国際的な研究として推進する体制を構築することができた。 第二に、上記フィールドワークで入手した情報を「エンクレイブ」形成に関連する国内の情報源である実務家、行政に対して紹介することで、実践的研究としての本研究を特色づけるものとなったことが挙げられる。また、本研究を基礎に、「エンクレイブ」形成に直接・間接に影響を及ぼす東京都心部の観光計画の作成に関わることともなり、本研究の学際性と実践性に加え適用性を高めることとなった。 第三に、上記フィールドワークの結果について、部分的ではあるが学術論文として発表することで、これまで日本では知られていなかった都市計画プロジェクトの紹介を行ったことが実績として挙げられる。また、当該論文は、文化的消費にもとづく都市変容メカニズムの調査手法の開発を推進するための資料ともなるものでもある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
海外都市調査の一環としてカナダ・ケベック州・モントリオール市で実施したフィールドスタディにおいてQuartier des spectacles(QDS)地区というアートやエンターテインメントを中心とする都心部再生プロジェクトを発見したが、それにより本研究のテーマである「エンクレイブ」形成のメカニズムを説明する革新的かつ最新の取り組みのモデル化を開始することができた。現地では上記プロジェクトの当事者からの一次情報に加え、まだ我が国では紹介されていない文献も入手することができ、フィールドワーク後は、当該当事者や研究者などからも本研究への協力を得られることとなった。同時に、ケベック州政府在日事務所からも多大な協力をいただくことになり、充実した研究体制を整えることができた。現地では、上記QDSと類似性をもつカナダ以外の都市についての関連情報も入手することができ、今後の事例調査のために大きな示唆を得た。 理論面では、QDSの調査を通し、本研究がテーマとして焦点をあてる「エンクレイブ」についての概念的枠組みの構築が進みつつあり、特に公共空間とアート・エンターテインメントの結合、そして文化的消費と都市空間再生の融合についての合理性と課題の理解について考察を深めることができた。以上のように、海外の最新事例調査をきっかけに、本研究テーマに関する一次、二次情報の収集および国際的な研究ネットワークの構築という点で計画以上の進展があった。また、都市再生という観点から我が国ではじめてQDSを紹介する論文を発表し、今後のより分析的な調査の土台を構築したことも大きな進展である。
|
Strategy for Future Research Activity |
上述のQDSに関する調査をさらに進めつつ、海外他都市および国内の状況についても事例調査を進めていく予定であるが、段取りとしてはモントリオール市および東京におけるQDS関係者・組織との研究ネットワークの拡大を最優先にしたい。その理由は、彼らが持つ関連情報の質と量は比類のないレベルであり、また、本研究に対する理解を既に得ているため、今後より有用な情報収集が期待できるからである。調査にあたっての一つの課題は、関係者や専門家との口頭での情報収集は英語であるため問題ないが、文献などはフランス語のものが多く、その収集と翻訳にやや時間がかかることである。 本研究のテーマである「エンクレイブ」は、QDSだけでなく国内外の都市においても公共セクターと民間セクターのパートナーシップによる取り組みが顕著であるが、特に、メディア産業だけでなく現地アーティストの関わりが大きな影響力を持つものと考えている。「エンクレイブ」という文化的消費の空間形成に都市計画とメディア産業やアーティスト、特に後者がどのように関わるのか、まだ明確には示されていない。敵対する場面も多々ある都市計画とアート・アーティストの関係が「エンクレイブ」形成にどのようにかかわるか、今後の研究を推進していくための重要な着想としていきたい。そのためには、関連のアーティストという主体、つまり人とその具体的な活動についての情報収集が必要となる。メディア産業の特定に比べると、アーティストを特定できるかどうかが一つの課題となる。そのうえで、行政、不動産ビジネス、ホスピタリティ・ビジネス、NPOなどの都市マネジメント主体、芸術・文化施設運営者などの関わり合いを把握していきたい。
|
Causes of Carryover |
海外研修が実施できなくなったため、今年度の海外事例調査の件数を減らしたことが主な理由である。次年度における海外事例調査で支出となる予定である。
|