2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K02157
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
森 一郎 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (00230061)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 世界への愛 / ハイデガー / アーレント / 世代問題 / 現代の危機 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の初年度である平成29(2017)年度は、「世界への愛」という研究テーマが大きく進捗した一年であった。 まず、2017年10月に、単著『世代問題の再燃――ハイデガー、アーレントとともに哲学する』を明石書店から出版した。これは『死を超えるもの 3・11以後の哲学の可能性』(東京大学出版会、2013年)のいわば姉妹編であり、世界への愛をめぐる試論集成である。世代という今日的問題を深く問い直そうとする本書に対する反響は大きく、朝日新聞などで書評に取り上げられ、出版二ヶ月後には増刷となった。 また、2018年3月には、初めての書き下ろし単著『現代の危機と哲学』を放送大学教育振興会から公刊した。放送大学ラジオ科目の印刷教材であり、現代人にとっての哲学的思考の重要性を広く、分かりやすく市民に伝える内容でありつつ、ニーチェ、ハイデガー、アーレントについて独創的解釈を展開している。のみならず、年来の「世界への愛」著作構想の第一部という面をもち、「始まりの時間性」や「世界の存続」の謎に挑む大胆な思索の書である。4月から始まったラジオ放送とともに、今後の反響が期待される。 論文としては、「ハイデガーからアーレントへ――世界と真理をめぐって」を、実存思想協会編『実存思想論集』第32号に、「『存在と時間』はどう書き継がれるべきか」を、ハイデガー研究会編『Zuspiel』に、「労働という基礎経験――ハイデガーと三木清」を、青土社の『現代思想』のハイデガー特集号に、「世代の問題――マンハイムと三木清」を、明治大学の『異境の現象学』に、それぞれ寄稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年来の構想であり、本研究のテーマに掲げている「世界への愛」を、書き下ろし単著『現代の危機と哲学』として公けにできたことは、研究が順調に進んでいることを示してあまりある。書き継いできた連作試論を一書にまとめた『世代問題の再燃』の出版と合わせて、じつに実りある一年だった。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は、前半には、ハイデガーの技術論講演精選の文庫新訳を出すつもりであり、合わせて、年来のハイデガー研究の集大成となる論文集を出版する予定である。後半には、書き下ろし単著『核時代のテクノロジー論――ハイデガーの技術論講演を読み直す』の出版をめざす。アーレントの政治哲学に関する試論をまとめた論文集2冊の企画も始まっており、2019年の公刊をめざす。
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