2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K02174
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
倉田 剛 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (30435119)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | メタ存在論 / 分析形而上学 / 芸術作品の存在論 |
Outline of Annual Research Achievements |
単著『現代存在論講義I:ファンダメンタルズ』(新曜社、2017年4月)の中で、スタンダードなクワイン的メタ存在論とそれに異議を唱える非スタンダードなメタ存在論(虚構主義、マイノング主義、新カルナップ主義)をめぐる方法論的な論争を整理し、「クワイン以後のメタ存在論」の最新の動向を分析した。それに続き、単著『現代存在論講義II:物質的対象・種・虚構』(新曜社、2017年10月)では、そうした整理と分析にもとづいて、分析形而上学の代表的なトピックスである「物質的構成」、「自然種」、「可能世界」、「虚構的対象」等のトピックスを詳細に論じた。そのうえで、研究代表者は、近年のラディカルな非クワイン的枠組みに対して、より穏健な枠組み、すなわちクワイン的メタ存在論に見いだされるプラグマティックな手法をポジティヴに捉える枠組みを、「実践的制約」等の概念に訴えつつ、擁護することを試みた。 また、哲学会第五十六回研究発表大会(2017年10月)のシンポジウム「作品の美学」では、芸術作品の存在論について、部分的に、メタ理論的なアプローチを用いた提題発表を行った。そこでは、制度的対象としての芸術作品を記述するために最適な理論を選択するとはどのようなことかという問題を論じた。とりわけ社会存在論における「地位機能の付与」とゲーム理論の「均衡としての制度」という概念を取り上げ、双方のメリットとデメリットを、一階の存在論およびメタ存在論という観点から明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の主な研究課題は「クワインの標準的メタ存在論の明示化」および「非クワイン的メタ存在論をめぐる近年の諸議論の分析」であったが、これらの課題については、単著『現代存在論講義I:ファンダメンタルズ』(新曜社、2017年4月)とその続編である『現代存在論講義II:物質的対象・種・虚構』(新曜社、2017年10月)の中で、おおむね計画通りに研究を遂行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題は、そもそも非クワイン的な方法論が、「存在論的コミットメントの基準」と「理論選択」を柱とする標準的なメタ存在論のオルタナティヴになりえるのかを、より詳細に吟味することである。具体的には、実在論の存在論的コミットメントを回避しつつ、その理論的成果のみを享受する戦略をとる虚構主義の「寄生的アプローチ」が果たして標準的方法のオルタナティヴとして相応しいのか、また標準的方法が前提する「量化と存在との不可分性」にチャレンジする立場として知られるマイノング主義はクワイン的枠組みにとって代わることが可能なのかを再検討する。さらに、存在論的論争は、実のところ世界のあり方に関する論争ではなく、言葉遣いの不一致にもとづく論争であると主張する新カルナップ主義(「量化子変動の理論」など)の妥当性を正確に評価する必要もある。 これらの課題に取り組む際に、試金石となるのは、各々の方法論にもとづいて構築される一階の存在論の説明力である。われわれはそうした一階の存在論として、とくに社会存在論と芸術作品の存在論を考察する予定である。
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Causes of Carryover |
発注していた物品が年度内に届かなかったため。
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