2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K02174
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
倉田 剛 九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (30435119)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 存在論 / 形而上学 / メタ存在論 / 社会存在論 / 制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の分析形而上学では様々なタイプの「非クワイン的メタ存在論」について議論が盛ん行われているにもかかわらず、社会存在論に関するメタレベルの考察はほとんどなされていない。研究代表者(倉田)は、この問題に着目し、2018年8月に北京で開催された世界哲学会議において、社会存在論への「存在論的デフレ主義」の適用の是非に関する発表を行った。そこでは従来の「トリヴィアルデフレ主義」の限界が指摘されるともに、「実践的デフレ主義の可能性」が擁護された。この発表の成果の一部は、九州大学哲学会編『哲学論文集』第54輯(2018年)に、「存在論的デフレ主義を再考する」という巻頭論文として寄稿した。 また、分析美学、とりわけその作品存在論に関するメタ的考察を、哲学会編『哲学雑誌』132巻804,805号合冊(2018年)に掲載された「制度的対象としての芸術作品:社会存在論の観点から」の中で行った。そこでは芸術作品論に関する制度論的分析の方法として、サール的な標準的アプローチ(地位機能としての作品)とゲーム理論的なアプローチ(均衡としての作品)を対比的に論じ、そのうえで二つのアプローチは調停可能であることが示された。この二つのアプローチをめぐる諸問題は、その後、フッサール研究会主催のシンポジウム提題「社会存在論の「統一理論」:その意義と問題点」(2019)の中で、より一般的な仕方でとり上げ直されることになった。 さらに、2018年12月に開催された西日本哲学会第六十九回大会のシンポジウム「現代形而上学の展開と応用」における提題発表では、ミクロレベルとマクロレベルの存在論に関するメタ的考察、とりわけ社会存在論における個人主義と全体論の問題に関して方法論的な検討を行い、「許容可能な全体論とは何か」を考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の研究計画の一つは、現代の「非クワイン的メタ存在論」の一つである新カルナップ主義(「多くの存在論的論争は、世界のあり方に関する論争ではなく、言葉遣いの不一致にもとづく論争である」と説く立場)を適切に評価することであった。この計画は、とくに世界哲学会議(北京、2018年)における研究発表"Ontological Deflationism and Social Ontology"の中で、従来型のデフレ主義批判というかたちで遂行され、また論文「存在論的デフレ主義を再考する」(2018)の中でもより一般的なかたちで遂行された。この意味において、本研究課題の進捗状況はおおむね順調であると述べることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに得られた「クワイン以後のメタ存在論」の研究成果を、社会存在論に応用することを予定している。すなわち、社会諸科学の存在論的コミットメントの問題を、メタ存在論の道具立てを用いて、より精緻に分析することを目指す。 より具体的には、社会諸科学がコミットしているように見える「社会種」(social kind)、「社会的性質」(social property)、「社会的関係」(social relation)、「社会的集団」(social group)、「社会的プロセス」(social process)、「社会的構造」(social structure)、「社会的実体」(social substance)等々に関する実在論/反実在論についてのメタ的な考察を行うつもりである。
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Causes of Carryover |
発注した図書(洋書)の納品が年度末の納期に間に合わなかったため。次年度に繰り越された残額は納品されなかった図書の購入に充てる予定である。
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