2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17K02174
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
倉田 剛 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (30435119)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | メタ存在論 / 社会存在論 / 実在論 / 制度論 / 社会種 / 日常世界 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、メタレベルの研究にシフトしつつある存在論研究において、存在論的コミットメントの基準を軸とするクワイン的標準的理論と、それに異議を唱える非標準的諸理論との対立という構図の下、「存在論の適切さに関する評価基準」および「各領域的存在論にとって望ましいメタ存在論」について、包括的かつ批判的なメタ理論的考察を行うことを目的とするものである。 2019年度は、特に、これまでほとんど考察の対象となることがなかった「社会存在論」(socail ontology)のメタ理論的検討に焦点を絞って研究を遂行した。その成果は、まず(1)日本哲学会第78回大会(2019年5月19日、首都大学東京)の学協会シンポジウムにおいて、「実在論と「心からの独立性」ーー社会種のリアリティーを考える」と題する提題発表として公表された。そこでは社会存在論の一つの立場、すなわち「社会種の実在論」を擁護する際のメタ理論的基準が検討された。次いで、(2)単著『日常世界を哲学する――存在論からのアプローチ』(光文社新書、2019年8月)を上梓した。この新書の中では、様々なタイプの社会的存在者に関する一階の存在論に加え、それらに関するメタ理論の議論も行った。また、(3)単著論文「社会的事実の存在論的構造――「アンカー個人主義」を再考する」(西日本哲学年報第27号、2019年10月)の中では、社会存在論の標準モデルが前提する個人主義的枠組みを批判的に検討し、「許容可能な全体論(集合主義)」の正当化に向けたメタ理論構築の必要性を説いた。さらに、(4)単著論文「社会存在論の統一理論について――その意義と問題点」(『フッサール研究』第17号、2020年3月、電子ジャーナル)では、社会存在論の中心に位置する制度論において、ゲーム理論的アプローチとサール的標準モデルを統合しようとする試みを、メタ的視点を交えて批判的に考察した。
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