2019 Fiscal Year Research-status Report
Emotions in Kant's Philosophy; From the Viewpoint of Critique of Judgement
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17K02177
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
竹山 重光 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (60254520)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | カント哲学 / 情動 / 気分 / 個物 / 情動の自然性 / 情動の歴史性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成31年(令和元年)度は、前年度に引き続いて、『判断力批判』に直接関係する論理学的概念の検討と、現代の情動研究一般の調査・検討などを行なった。 これに加えて本年度は、情動(感情)の歴史性という、研究のための新たな視点を手にいれることができた。それは、21世紀になって思想研究の表舞台にのぼってきた「感情史」によってもたらされた視点である。感情と感情をめぐる言説の歴史的研究などを行なうこの研究動向は、日本でもしばらく前に紹介されている(たとえば『思想』2018年8月号の、感情の歴史学特集)。 このことによって、一つの根本的問題が表面化する。情動の自然性と歴史性という問題である。心理学や認知科学では情動を自然的なもの生物学的なものとして考える傾向が強いが、情動をむしろ文化的歴史的なものとして考える可能性と必要性が豊かに拓かれてきたのである。この根本的問題は、本研究で検討を加えられている論点では、基本情動(basic emotions)という問題に直接関係する。 カント哲学においては、まず「快と不快」という最上位の一般的概念がある。そして、そのサブセットとしての「美」や「崇高」、さらに、たとえば『人倫の形而上学』での「同情」や「感謝」などかなりの数のサブセットが存在する。最上位の一般的概念は別として、サブセットについては、その自然性および歴史性を不問のままとするわけにはいくまい。 このような新視点をも取り入れつつ鋭意研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記したとおり、情動(感情)の歴史性という新たな研究視点が加わったので、研究全体としてはより豊かで広範囲にわたりうるものになってきていると自負する。今年度のなかごろよりすでに最終的な研究取りまとめ(報告書)のための草稿を作成しはじめており、新たな視点も取り込む努力をしつつ、考察をすすめ、充分な全体的構成を図っていきたい。 残念なことだが、年があらたまったここ数ヶ月におよぶ、COVID-19による社会や教育をめぐる状況の変化は、私の勤務校が医科大学であることもあいまって、ご多分に洩れずかなりの負担になっている。それは忙殺に近いかもしれない。それゆえ「おおむね順調」としなければならない。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」に記したとおり、すでに最終的報告書の草稿作成をはじめているので、これを今後も続行する。同時に、できるかぎり、ここ数年の国外における研究動向に認められる、論理学的角度からではない、個体性や偶然性への着目にも触れてみたいと考えている。
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Research Products
(1 results)