2020 Fiscal Year Research-status Report
Emotions in Kant's Philosophy; From the Viewpoint of Critique of Judgement
Project/Area Number |
17K02177
|
Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
竹山 重光 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (60254520)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | カント哲学 / 情動 / 気分 / 個物 / 情動の自然性 / 情動の歴史性 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、前年度に引き続いて、(1)『判断力批判』に直接関係する論理学的概念の検討と、(2)現代の情動研究の調査検討を行なった。これに加え、(3)カントが『人倫の形而上学』で提示している徳義務のいくつか(「同情」「感謝」など)について、その情動的側面と実践的側面の分析と検討を開始した。 (1)に関しては、「個物」あるいは「個体」という概念もしくは問題の困難さに難渋していると白状しなければならないが、今後も探究していく。(2)に関しては、前年度に取り組みはじめた「情動の歴史性」をめぐる諸議論からカント理解に資する多くの教示を受けている。たとえば、「名誉(Ehre)」についてそこでなされている議論を参照しつつ、カント哲学における名誉概念を検討しはじめている。(3)に関しては、以下に記すとおり、すでにその一端をかたちにしている。 カントは『判断力批判』で感情という能力のア・プリオリ性と独特の原理的性格とを自覚した。この点は研究者間でほぼ了解されているわけだが、そのような『判断力批判』を考察と思索の立脚点としてカント哲学全体をとらえなおすことは、自覚にいたる以前のテキストを読解するという困難をともなうとはいえ、きわめて刺激的で可能性豊かな研究テーマであると、あらためて感じている。 現在印刷中だが、『人倫の形而上学』を対象テキストとした、上記(3)に関連する論考の一部を勤務校の『紀要』に掲載する。伝統的には重要だがカント哲学についてはあまり探索されてこなかった、「友情」(Freundschaft)という概念をテーマとしている。これは研究取りまとめの報告書にも改訂し増補のうえ収める予定である。 また、『判断力批判』との直接的関連は濃くないが、カントの実践哲学に関する優れた研究書を共訳で公刊した(オトフリート・ヘッフェ『自由の哲学―カントの実践理性批判』、法政大学出版局)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度は、COVID-19の感染拡大による、いわゆるオンライン授業への移行、それにともなう成績判定業務などの変化と拡大、さらには、単科大学の教員であるゆえ毎年度携わらねばならない入学試験業務の拡大など、たんに事務的な事柄には収まり切らない多種多様で新奇な業務によって、文字通り忙殺されたと言わざるをえない。とりわけ上述後者の業務は疲弊をもたらした。研究のために割くべき時間が、大幅に削られてしまった。 それでも、令和2年度からはじめた最終的な研究取りまとめ(報告書)の執筆は中断していない。さらに、【研究実績の概要】欄に記したとおり、本研究のテーマに関連する論考を勤務校の紀要に掲載する予定である。 以上2点のゆえに、進捗状況を「やや遅れている」とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
既述のとおり最終的報告書のための執筆をもうはじめている。これを続行して完成を目指す。 「『判断力批判』からの究明」という、研究課題名に記した考究様式の設定を絶えず意識しつつ、快不快の感情をはじめさまざまの情動的なものについて、それらがカント哲学そのものを通底する本質的要素であることを明らかにしたい。
|
Causes of Carryover |
令和2年度はCOVID-19の感染拡大にともない、所属学会のほぼすべてが開催中止もしくはいわゆるオンライン開催となった。それゆえ、当初計上した旅費をまったく支出できなかった。これが次年度使用額の生じた最も大きな理由である。 令和3年度も、旅費に関しては判断のつきかねる現今の状況である。物品費の上限割合などを勘案しつつ、研究文献の幅広い購入を主眼として適切に使用していきたい。
|
Research Products
(3 results)