2018 Fiscal Year Research-status Report
清末プロテスタント宣教師の中西文化論に関する基礎的研究
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17K02248
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
手代木 有児 福島大学, 経済経営学類, 教授 (20207468)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 清末宣教師の漢文著作 / 中国国民性批判 / 清末中国の西洋受容 / 文明観転換 / 自己認識の形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
30年度は、29年度に行った清末宣教師の代表的中西文化論であるアレン『中西関係略論』(7万字)、フェーバー『自西徂東』(21万字)、アレン「治安新策」(4万字)の三著作の精読と清末知識人の変法論と比較対照、およびアレン関連研究の吸収や上海での未収集関連テキスト・文献の調査収集、さらに三著作対象の資料集作成(未完)に基づき、2013年に刊行した拙著『清末中国の西洋体験と文明観』(汲古書院)で未解決だった宣教師の中西文化論と清末知識人の自己認識(国民性認識)形成の関係解明に取り組んだ論文「清末中国における文明観転換と自己認識」を執筆・発表した(『史林』102巻1号、特集「文明」、史学研究会[京都大学文学部]、2019年1月刊、75頁-112頁、史学研究会からの依頼により執筆)。本論文により、従来主として日清戦争後の中国知識人による国民性認識の問題として論じられてきた、清末の文明観転換期の新たな自己認識の形成が、実は19世紀西洋の否定的中国認識を踏まえた在華西洋人宣教師の中国国民性批判から強い影響を受けつつ形成されたものだったことを、実証的に明らかにできたと考える。 また関連して書評「倉田明子『中国近代開港場とキリスト教』東京大学出版会、2014」(『中国研究月報』2018年4月号)、論説(新聞記事)「中国国民性について(3)」(https://seijipress.jp/,政治プレス新聞社、2018年4月)を発表した。 総じて30年度は計画以上の成果を上げることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、本研究は清末プロテスタント宣教師の代表的中西文化論であるアレン『中西関係略論』(7万字)、フェーバー『自西徂東』(21万字)、アレン「治安新策」(4万字)の三著作の精読を踏まえて、三著作を主な対象として宣教師の中西文化論に関する資料集を作成したうえで、その成果を踏まえて3年目の31年度に研究論文を作成する計画であった。その後、29年度の作業で三著作の精読・分析、清末知識人の中西文化論との比較対照などの作業に一定の目途がついた段階で、本研究に関連の深いテーマでの論文執筆の依頼を受けたため、30年度は資料集作成を途中で中断し、当初構想していた論文の執筆を前倒しで行い、当該論文を発表することができた。このため本研究は当初の計画以上に進展していると評価できると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
31年度は当初から作成を計画していた資料集を、30年度に書いた論文を踏まえて内容を増補する形で完成させることを目指す(3著作の要約のほか、3著作における中西国民性比較に関する対照表などを収録する予定)。また別に『自西徂東』の解説・全体内容の紹介を学術雑誌に発表する準備を進める。併せて本研究と関連する最新の研究である小野泰教『清末中国の士大夫像の形成―郭嵩燾の模索と実践』(東京大学出版会、2018年)について、関係学会(歴史学研究会、日本中国学会)からの依頼により学会誌に書評・論評を執筆する予定である。
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Causes of Carryover |
31年度における宣教師の3著作に関する資料集の作成に参照しうる新たな宣教師関係の文献資料等を購入する必要が生じたため、それに必要なまとまった金額を残すことにした。31年度においては31年度分助成金と合わせて年度当初に必要な文献資料等を購入する計画である。
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Research Products
(3 results)