2017 Fiscal Year Research-status Report
German-Japanese Ideological Alliance
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17K02260
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
今野 元 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (60444949)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 大串兎代夫 / 神川彦松 / 矢部貞治 / 南原繁 / 安井郁 / 小野塚喜平治 / 田中耕太郎 / 小野清一郎 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は初年度なので、論文執筆の前提となる史料収集に専念した。東京に繰り返し出張し、主に東京大学法学部原資料部、国立国会図書館憲政資料室で史料収集を行った。東大法学部では上杉愼吉文書、岡義武文書が利用価値が高く、平成30年度以降も引き続き閲覧する予定でいる。国会図書館憲政資料室の大串兎代夫文書も新鮮な発見が多く、今後も閲覧を継続する予定である。 キーワードで挙げたような各登場人物について、現在年表及び文献一覧を作成している最中で、これにより個々の人物に関し、今後の作業工程を可視化するように努力している。最終的には、これらの人物の列伝という形で、著書『思想上の日独同盟:総力戦体制論のドイツ的起源』を刊行できれば幸いと考えている。徐々にそのデッサンが進みつつある状況である。 なお本研究の前提を為すものとして、吉野作造及び上杉愼吉の研究を以前から進めてきたが、これが平成30年度科研費(研究成果公開促進費)を得て、遂に『吉野作造と上杉愼吉:日独戦争から大正デモクラシーへ』(名古屋大学出版会)として刊行されることになった。また以下の論文を平成29年度末に刊行した。今野元「吉野作造対浪人会の立会演説会――論争の発端から終結までの過程分析」、『共生の文化研究』第12号、 5-25頁、平成30年3月。こうした研究に対する反応が、平成30年度後半以降は出てくると思われるので、そこからも学んで本研究も進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は神川彦松、矢部貞治を中心に研究を進める予定であったが、両者は刊行された文献でおおまかな見通しが付いてきたので、実際には平成30年度に実施する予定であった大串兎代夫の史料収集を早めに本格化させることにした。平成29年度中の史料収集(国立国会図書館憲政資料室の大串兎代夫文書の閲覧)でも、戦中・戦後の大串の活動に関する示唆が多く得られたので、研究はおおむね順調に進展していると考える。蓑田胸喜や小野清一郎に関しても、刊行文献で概略を把握しつつある。愛知学院大学では、小野に関する有益な史料を大量に見つけることができた。平成30年度には、中部ドイツ史研究会で研究の最初の中間報告「戦時下の東京帝国大学法学部:総力戦体制論のドイツ的起源」を行う予定である。可能であれば、平成30年度内にもう一回別所で報告を行いたい(京都のドイツ現代史研究会を希望している)。
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Strategy for Future Research Activity |
国会図書館の大串兎代夫文書は膨大であり、今後も読解に時間が必要と思われる。東大法学部の上杉愼吉文書、岡義武文書も重要で、特に後者は意外に重要なものが多く、同学年の矢部貞治や大串兎代夫のことを把握するためにも、今後も閲覧を続けたい。蓑田胸喜は当初研究の重要な柱と考えていたが、刊行文献を読み進めるに従い、他の人物と大きく文章の質を異にすることに気が付いた。蓑田は主に文学部の人間で、その文章は哲学的であり、法学部の法学、政治学の文章とは大きく異なる。実際に論文を書くに際しては、脇役として位置付けた方がよいのかもしれない。これに対し岡義武、南原繁は、当初は脇役の扱いであったが、当初予想したよりもはるかにドイツの学問との関係が深く、むしろ矢部貞治や大串兎代夫と同様に主役として扱った方がいいかもしれないと思えてきた。なお本科研費の交付に際し、金額が減額されたことに伴い、四国や九州に毎年国内出張するという申請時の計画は、資金的に困難になってきた。このため、平成31年度あたりに、まとめて各所を回ることとしたい。
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Causes of Carryover |
複写や書籍取り寄せで使用する予定で残しておいた分が、平成29年度末に若干余ったので、平成30年度に合わせて使用したい。
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Research Products
(1 results)