2019 Fiscal Year Research-status Report
"Culture of Remembrance" in Post-Transitional Era: Transference of "Memoria" in Southern Cone
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17K02267
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
林 みどり 立教大学, 文学部, 教授 (70318658)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 集合的記憶 / ポスト軍政期 / ホロコースト / ドイツ / 南米 / ポピュリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
ホロコーストなどの集合的な記憶言説が社会空間で具体的にどのように視覚化され、言説として流通し、ローカルな記憶状況のみならずグローバルな記憶状況に接合することによって、ローカルな記憶が再文脈化されるかを明らかにする作業を行った。その過程で、軍政期だけでなくポスト軍政期に多く引用・参照・言及されてきた戦後ドイツのホロコースト関連記憶研究等の事例研究との比較を行うことによって、南米に固有な想起のあり方の有無について検証することをめざした。本年度は比較分析のための事前調査として、ドイツにおけるホロコースト言説の構築と普及の歴史的経緯とその問題点、ドイツと南米(特にアルゼンチン)の人権団体や政治組織との「記憶」をめぐる具体的な協力関係(ユダヤ人コミュニティ間の交流を含む)、いわゆる「ホロコースト言説」が南米に適用される際の問題点等について調査を進めた。 また、2019年12月に再度ポピュリスト政党と目されるアルゼンチン正義党が政権を獲得したことにより、2010年代半ばから続いた南米諸国の保守化の波(世界的な保守化の波に連動するいわゆる"blue tide"の登場)への揺り戻しが起こった。これにより、ポスト軍政期の正義党(とくにキルチネリスモ)の「記憶の政治」がどのように継承され、あるいは変容を受けるか、またこの間の記憶言説の変化や諸組織の変容等について、現地資料の入手が困難な状況をうけて、現在オンライン上の資料を中心に検証を進めつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本来はグローバルな記憶言説との接合によってローカルな記憶言説の脱文脈化を検討する予定だったが、現地調査を予定していた時期に世界的な新型コロナ(COVID-19)の蔓延等により急遽中止せざるを得なくなってしまった。代替措置として考えられるのは、アルゼンチンのメディアや文学・映像等でグローバルな記憶がどのように領有され分節されるかの分析であったが、そのための資料の入手も滞っている。
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Strategy for Future Research Activity |
現状では新型コロナの終熄が見えない状況にあるので、早急に遠隔での資料入手の代替策を講じる予定である。現地での資料蒐集が不可能な場合を想定して雑誌等の定期刊行物を豊富に所有している現地の古書店を資料入手先に考えていたが、当該書店との連絡がとれていないので早急に新たなルートを開拓するか、あるいは別途方策を講じる必要がある。 また同時に、A・アスマンの「リコレクション」と「アナムネーシス」概念をめぐる論点整理を行い、南米における共同想起の営為を両概念と照応させつつ検証する理論的作業にも着手する予定である。エスノセントリックな排除の論理を形成する「リコレクション」に対抗する想起の契機が可能であるのかについての最終的な考察をおこなう。
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Causes of Carryover |
アルゼンチンとチリにおけるグローバルな記憶言説のローカル化による脱文脈化の検証のために現地調査と資料収集を予定していたが、COVID-19等の影響により現地調査ならびに資料収集の中止を余儀なくされたため。 COVID-19が終熄し現地での資料収集が可能になった時点で現地調査を再開する予定である。また現地の資料収集先が閉じられている場合を想定してあらかじめ複数の資料入手先を探して事前にコンタクトをとっておく予定である。
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