2017 Fiscal Year Research-status Report
中・近世のキリスト教霊性における「女性神秘思想」の展開 ―思想的意義と影響の解明
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17K02274
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Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
須沢 かおり ノートルダム清心女子大学, 文学部, 教授 (50171195)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 女性神秘家 / キリスト教霊性 / 身体性 / 内面化 / 実存化 / 情緒的表現 / 女性の言語表現 / 修道院 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は中・近世の代表的女性神秘家の著作の資料収集とテクストの解読を主に行った。2017年夏にドイツ、イタリア、フランスへ出張し、代表的な原典と初版の翻訳書を閲覧し、複写し、テクストの解読作業に入った。さらに中・近世の女性神秘家に関する二次資料の収集と解読も同時並行した。ヨーロッパで資料収集、調査を実施した研究実績の概要は次の通りである。ドイツ(フライブルク滞在)フライブルク大学の古文書研究所にて、中世の女性神秘家、ビンゲンのヒルデガルド、マグデブルクのメヒティルトの著作研究、資料収集を行った。フランス、ルルドにて研究・調査活動を行った。ルルドのベルナデットに関する資料収集した。またベルナデットの霊性の実りであるルルド研究を進めた。ルルドで多くの傷病者が収容されている病院(Accueil Notre Dame)で、医師、看護師、介護士、スタッフにインタヴューを実施した。また、イギリスのイエズス会のカレッジから来ている90名のカトリック巡礼団の一員として同行し、彼らが病者とともにどのような巡礼を行っているか、司祭、ブラザー、随行している医師、看護師、ボランティアからインタヴューを取ることができた。今回実際にこのイギリスからの巡礼に参加することによって、ベルナデットの霊性が、どのような点で巡礼地ルルドの根幹となっているか、一歩踏み込んだ理解を得ることができた。またフランス、ディジョンで、ディジョン大司教区資料室、およびカルメル会修道院にて女性神秘家に関する文献の収集を行った。専門家へのインタヴュー、調査では、女性神秘家、マルグリット・マリー・アラコクを中心に広まったイエスの聖心への信心と、カルメル会の三位一体のエリザベトの霊性について調査・研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標であった女性神秘家についての資料収集、専門家からの専門的知識の提供をおおむね順調に進めることができた。女性神秘家のテクストを入手することによって、原語にふれ、女性特有の表現、言語、霊性への手がかりをつかむことができた。女性神秘家の霊性における身体性との関わりの源泉を考察するきっかけになったことは収穫であった。連携研究者とも緊密な協力体制をもち、討論、意見の交換を通して、女性神秘家特有の情感豊かで身体的な表現と霊性との関わりについて重要な洞察と見地を得られた。これらの研究の中間報告として2本の活字論文を作成した。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度も、ドイツ、イタリア、フランスの大学、図書館、古文書研究所、修道院でのテクストの収集、解読、解釈が主な目的となる。昨年度は一身上の都合により、出張期間を短縮したため、イタリア、ヴァティカン図書館での資料の収集と閲覧、ならびにドイツ、ドイツ、ルーツペルツベルグ修道院での資料収集が十分にできなかった。原典資料の収集と複写には多くの時間と労力を必要とする。そこで今年度は、8月ー9月にかけて再びヨーロッパに出張し、研究・調査にあたる計画である。さらに、ドイツとイタリアにいる連携研究者とも研究計画、実施についてレヴューを行い、研究成果をまとめるための共同研究を行う。
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Research Products
(5 results)