2018 Fiscal Year Research-status Report
Modal System of Improvisation in Arabic Classical Music
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17K02291
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Research Institution | Tama Art University |
Principal Investigator |
松田 嘉子 多摩美術大学, 美術学部, 教授 (80407832)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アラブ音楽 / トルコ音楽 / ウード / タクスィーム / マカーム |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、過去から現在までの代表的音楽家の、主としてウード ・タクスィーム(即興演奏)の分析を継続し、マカーム(旋法)の構造と展開について資料調査と現地調査を中心に研究を進めた。マカーム(旋法)の分類と整理のためのウード教則本や研究書の収集が進み、それらの調査によって、マカームごとに、導入・開始・展開・転調・帰結等の行程に用いられる典型的なテトラコルドの構造が把握されてきた。 現地調査としては、2018年4月ドーハにて行われたウード ・フェスティバルに参加した。現在の代表的なウード奏者の演奏する優れたタクスィームを聴取し、演奏終了後には、聞き取り調査を実施した。それらの調査により、前述の資料調査によって把握された構造と現在の構造のつながりを確認することができた。 また、2018年12月には昨年度後半から本年度にかけての研究成果展として、公開講座「マカームとラーガ3」(多摩美術大学)を開催した。「楽器学と奏法論」をテーマとし、東京音楽大学小日向英俊氏をはじめとする音楽家を講師陣として迎え、講義と実演によってアラブ音楽とインド音楽の比較検討を行った。アラブ音楽ではマカームを、またインド音楽ではラーガを表現するために、それに向いた楽器と奏法が発達していることがこれまでの調査で判明しており、その多様な在り方を、実演を通じて聴講者に理解が共有されるよう努めた。映像はDVD化して研究者等が閲覧できる形の記録を残した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画どおり、資料調査により過去の大音楽家たちを中心にタクスィーム(即興演奏)を分析しており、マカーム(旋法)ごとに、導入・開始・展開・転調・帰結等の行程に用いられる典型的なテトラコルドの構造が把握されてきた。カタールのドーハで行われた「カターラ第2回ウード ・フェスティバル」にウード奏者として出演し、自身の即興演奏を披露するとともに、現在の代表的音楽家の即興演奏に関する調査を行った。メフメット・ビットメッツ(トルコ)、ユルダル・トクジャン(トルコ)、ハイグ・ヤズジアン(ギリシャ)といった名手が出演していたので、彼らの秀逸な即興演奏を直接聴取した。演奏終了後には聞き取り調査を実施し、トルコやギリシャのウード音楽においても、アラブと同じようにタクスィームが至高の芸術の形であるとの知見を得た。特にトルコのマカームや奏法について、詳細な知見を得ることができ、アラブと他国との比較研究の面で進展があった。また、それらの調査により、前述の資料調査によって把握された構造と現在の構造のつながりを確認することができた。 マカーム(旋法)の分類と整理のための、ウード教則本や研究書の収集も予定通り進んでいる。また様々な講演や公演を通じて、アラブ古典音楽の楽曲や即興演奏、その仕組み等を解説および実演する活動を継続している。
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Strategy for Future Research Activity |
録音やウェブ上の音源資料も含め、今後も引き続き優れたタクスィーム(即興演奏)を多く聴取する。20世紀の偉大な音楽家たちから現代に活躍する新しい音楽家たちまで、典型的なフレーズはどのように変化してきたのか、また国や楽派、個人によってどのような趣向や美学の違いがあるかを考察し、まとめる。文献・資料面からもタクスィームとマカーム(旋法)の関係の研究を進める。ウードに限らずカーヌーン、バイオリンなど他の楽器にも枠を広げる。 可能であれば昨年度に計画していたチュニジアでの研究調査を実施する。スース高等音楽院教でイラク人ウード奏者アリ・イマームのタクスィーム聴取を実施する。また国立コンセルバトワールのハリッド・ベッサ教授に協力を仰ぎ、タクスィーム分析の精度を高める。 講演や公演を通じて、解説および実演の活動を継続する。
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Causes of Carryover |
(理由)次年度に使用する研究費が生じた理由は、2018年11月にチュニジアでの研究調査を予定していたが、体調不良によりやむをえず中止したため、その出張費用が残額として生じたからである。 (使用計画) 2018年度度残額と次年度の研究費は、調査旅費(アラブ音楽関連領域) 、機器備品やソフトウェア、図書音源資料の購入、成果展の費用等に使用する予定である。
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Research Products
(7 results)