2017 Fiscal Year Research-status Report
A Study on Anonymity of Architecture Centered on Henri Lefebvre and Situationist
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17K02327
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
南後 由和 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 専任准教授 (10529712)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | コンスタント / ニューバビロン / オランダ / 絵画 / 彫刻 / 建築 / ひとり空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
オランダの芸術家コンスタント・ニューウェンハイスによる「ニューバビロン」(1956-74)の全貌について、(1)絵画のみの制作をしていた「コブラ時代」、(2)キネティック彫刻を制作するようになった「ネオヴィジョン時代」、(3)建築模型やドローイングを量産した「ニューバビロン前期」、(4)絵画の制作に回帰した「ニューバビロン後期」の時期に区分して考察を進めた。 9月からはデルフト大学建築学科の客員研究員として、オランダに滞在した(平成30年8月までの予定)。主にコブラ時代に関する資料の収集と分析を集中的に行ない、画家としてキャリアを出発したコンスタントが、絵画から彫刻、彫刻から建築へと関心の矛先を移行させていった経緯を整理した。これまでニューバビロンに関しては、絵画論と建築論のどちらかに偏った研究がなされてきた。それに対し、本研究では、ニューバビロンを絵画、ドローイング、彫刻、模型、地図、テキスト、映像などのメディウムの「翻訳」過程に存在するものとして位置づけなおすことによって、ニューバビロンをめぐるメディウムの固有性と領域横断的な性格を明らかにした。 そのほか、アンリ・ルフェーヴルの空間論に関する研究として、日本の都市に多く見られる「ひとり空間」の変遷について、ワンルームマンションなどの「住まい」、半個室ラーメン店やカプセルホテルなどの「飲食店・宿泊施設」、携帯電話やスマートフォンなどの「モバイル・メディア」の三つの軸から考察した『ひとり空間の都市論』を出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オランダに研究の拠点を置くことで、一次資料の収集を円滑に進めることができたほか、オランダの美術史や文化史にもとづく考察を補強することができた。また先行研究の批判的検討、ニューバビロンの多面性を照射するための理論的枠組みの構築を通じて、研究全体の構成を明確化することができた。その一方で、領域を横断した文献資料、多言語にわたるコンスタントの往復書簡などの一次資料の分析を進展させるには、いまだ時間を要することとなった。 上記の理由により、「(2)おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)「ニューバビロン前期」において、シチュアシオニストの「統一的計画」「漂流」「転用」などの方法概念が、どのように建築模型、ドローイング、地図制作などからなるニューバビロン制作へと結実していったのかについて、シチュアシオニストの他のメンバーとの往復書簡などをもとに分析を進める。(2)ヘーリット・リートフェルト、アルド・ファン・アイク、ヨナ・フリードマンなどとの交流の考察を通して、コンスタントが建築界へ接近していった過程を跡づけるとともに、1960年代の建築界のプロジェクトとニューバビロンの同異点を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初の予定よりインタビュー調査や美術館のアーカイヴ調査に伴う海外出張の回数が少なく、英語以外の文献収集に用いた予算も少なかったため、次年度使用額が生じた。次年度は、インタビュー調査と美術館のアーカイヴ調査に重点的に使用する。また、英語以外の文献収集、英語での研究発表資料の校閲料としても使用する予定である。
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Research Products
(6 results)