2017 Fiscal Year Research-status Report
中近世移行期の絵屋の活動と大名コレクションにみるイメージ循環の研究
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17K02329
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
龍澤 彩 金城学院大学, 文学部, 教授 (00342676)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 源氏絵 / 扇面画 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、本研究が対象とする中近世移行期(16~17世紀)のやまと絵作品のうち、主として源氏絵の作品調査を行った。調査を実施した作品は、「源氏物語図屏風」(今治市河野美術館蔵)、「白描源氏物語絵巻」(逸翁美術館蔵)、「源氏物語図屏風」(東京富士美術館蔵)、「源氏物語画帖」(宇治市源氏物語ミュージアム蔵)、「源氏物語図扇面貼交屏風」(和泉市久保惣美術館蔵)である。 本研究の計画に掲げているテーマのうち、「流派間のイメージ循環と絵屋の活動の研究」に関しては、今治市河野美術館本と東京富士美術館本の調査を通じて、中近世移行期における土佐派と狩野派などの他流派の特色が交差する様相が看取され、さらに他の作例とも比較をしていく必要性が浮き彫りになり、研究を発展させる課題が得られた。また、「イメージ循環をもたらした媒体の研究」としては、本研究が重要な媒体として着目している扇面画に関して、久保惣本の調査を行ったほか、金城学院大学図書館所蔵の「源氏物語図扇面」を精査して、同作品は、室町時代以降の源氏絵の図様を継承する一方、歌絵の表現が見られるなど、扇という媒体そのものの特性とも関わる要素が見られることを指摘し、中近世移行期の源氏絵扇面の特色を示す作品であることを明らかにした。その内容については、論文「金城学院大学図書館所蔵「源氏物語図扇面」について」『金城日本語日本文化』第94号、金城学院大学日本語日本文化学会、2018年3月1日、pp.15-38)として発表した。「大名道具におけるイメージ循環の研究」に関しては、すでに調査を行っている尾張徳川家伝来の作品について、改めて画像を整理し、次年度以降の研究の準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2017年度に海外(アメリカ)の美術館での調査を予定していたが、2018年度に実施を延期したため。2018年度は、本務校において特別研究期間を取得できることとなり、より時間的な余裕をもって調査を行うことができると判断し、計画を変更した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、2017年度に海外調査を行う予定であったが、本務校にて2018年度に特別研究期間が得られることが決まったため、より時間的に余裕がある2018年度に延期した。2018年度は、フリーア美術館(アメリカ)にて長期の調査を行う予定である。同館には2017年度中に、本科研の研究を軸にした研究計画「A study on the effect of the circulation of images on narrative paintings in seventeenth century」を提出し、受け入れが決まっている。同館が所蔵する、源氏絵や奈良絵本など中近世移行期の物語絵を中心に作品調査を行う予定である。その他、国内調査に関しては、海の見える杜美術館、熊本大学図書館(永青文庫)ほかを予定している。研究成果の発表については、宇治市源氏物語ミュージアムでの講演や、論文執筆を通じて行う予定である。
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Causes of Carryover |
2017年度に予定していた海外調査を2018年度に延期し、PCの購入についても、海外調査にあたってより相応しいものを検討すべく2017年度の購入を見送ったため、次年度使用額が生じた。2018年度は、海外調査の準備(機材の購入等)や旅費等で使用する見込みである。
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Research Products
(1 results)