2018 Fiscal Year Research-status Report
近代の牙彫に関する基礎研究―安藤緑山の彩色牙彫を中心に
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17K02337
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Research Institution | Mitsui Bunko |
Principal Investigator |
小林 祐子 公益財団法人三井文庫, 文化史研究室, 主任学芸員 (60399334)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 象牙彫刻 / 牙彫 / 安藤緑山 / 近代工芸 / 蛍光X線分析 / 超絶技巧 / X線CT透過撮影 / 金田兼次郎 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.平成30年度の研究も前年に引き続き、安藤緑山の作品調査を中心におこなった。国内では東京、京都、大阪などの所蔵機関および個人コレクター方において、国外では台湾、英国の所蔵機関、個人コレクター方において作品調査を実施した。調査では作品の熟覧、採寸、および全図・部分図・作者銘・付属品などの詳細な写真撮影をおこなった。作品情報、撮影した写真はデータベースを用いて整理した。 2.緑山の有力なプロデューサーであった牙彫商・金田兼次郎が制作を手がけた大型作品の「牙彫大鷲置物」をスコットランド国立博物館にて調査した。この調査を通じて、ネジや金属棒を用いて各部材を接合する手法が、緑山のそれと共通していることを確認した。 3.本研究の目的のひとつは、制作技法が次世代に伝えられず、いまだ謎とされている安藤緑山の写実的な彩色牙彫について、文化財の光学的調査、すなわちX線透過撮影、蛍光X線分析などを用いて、その制作技法や著色材料を解明することである。平成29年度に、国立民族学博物館准教授・日髙真吾氏を中心とする研究グループの協力でおこなった蛍光X線分析調査に続き、平成30年度は緑山の牙彫の内部構造を解明するため、清水三年坂美術館および個人所蔵家の所蔵品を対象に、X線CT透過撮影およびX線透過撮影を国立民族学博物館において実施した。 4.第二次世界大戦中にインドネシアのスマトラ島で牙彫の技術指導をおこなったというご遺族の証言を検証するため、植民地時代の東南アジア関連の文献資料などの調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内外における安藤緑山の作品調査については、おおむね予定通りに進めることができた。 また国立民族学博物館の協力を得ておこなう作品の光学的調査についても、予定通り実施できた。
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Strategy for Future Research Activity |
安藤緑山の牙彫は、現在活発に売買などの取引がおこなわれており、新出作品発見等の情報提供が多く寄せられることから、平成31年度も引き続き作品調査に努める。調査では作品の熟覧、採寸、写真撮影などをおこない、データベースの拡充をはかる。 また制作技法や著色材料を明らかにするためのX線透過撮影、蛍光X線分析などの光学的調査も継続して実施し、サンプル数を充実させる。 さらにインドネシアのスマトラ島を中心とする、植民地時代の東南アジア関連の文献資料などの調査も平行して実施する。 加えて、安藤緑山以外の作者が制作した彩色牙彫にも調査対象を広げ、作品の情報を収集し、実作品の調査、写真撮影をおこなう予定である。これらを緑山の牙彫と比較・検討することで、制作技法や着色材料の特質を明らかする。
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Causes of Carryover |
平成30年度に実施する予定であった作品調査(佐賀県、京都府)が所蔵者の都合により平成31年度に先送りされた。次年度使用額は、これらの調査旅費として使用する予定である。
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